0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「目を閉じて抱いて」

目を閉じて抱いて [DVD]目を閉じて抱いて [DVD]
(2007/12/21)
武田久美子、井田州彦 他

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 磯村一路「目を閉じて抱いて」何度目かの再見、

 平凡なサラリーマンの高橋和也は、同じ会社の恋人が結婚を匂わせてくることをウザく思っていた。

 ある時、高橋は武田久美子を車で轢きそうになるが、武田は「ちゃんと轢いて欲しかった」と言う。

 退院した武田が気になって道で見かけた武田の後をつけた高橋はあるクラブに着く。
 武田はそこのニューハーフのホステスだった。
 
 武田に惹かれた高橋は店に通いつめ武田と愛し合うようになるが、両性具有的な武田はある時は男にある時は女になり、高橋はさらにハマっていく。

 高橋にフラれた彼女もその後武田のクラブを訪れるが、彼女もまた武田にハマっていく。



 

 内田春菊の原作を映画化した作品。

 全編に渡って、かっての磯村一路のピンク映画時代のソフト&メロウな魅力が満ち溢れている作品。

 両性具有の武田にハマりこんでいく高橋は明らかにかっての下元史朗が演じていた優しく相手を心の底で静かに思いやりながら一緒にいる男そのものに近いし、武田のキャラも現実に絶望していたかっての磯村ピンクのヒロインの面影をそのまま残している。

 個人的には武田久美子の最高傑作だとも思うが、特に丸山圭子の「どうぞこのまま」をボサノヴァタッチで歌う武田は絶品であると同時に、それが実に磯村映画のカラーを色濃く表現している。

 高橋とその彼女と武田の三角関係の状況が描かれているようで、彼女は完全に部外者的で、あくまで高橋と武田の恋愛関係とその儚さが描かれている。

 それを磯村らしい無機質で都市的な映像空間の中描き上げており、この映像センスといい、この男女の関係性といい、ドラマのテイストといい、モロに80年代初頭に磯村が撮っていたピンクの傑作群を想起させる。

 高橋和也も好演しており、映画自体に漂う虚無の気配も磯村映画に特徴的なアントニオーニや吉田喜重的なものであり秀逸である。

 90年代になってから磯村一路らしい魅力が見事に復活したことが公開当時とても嬉しかった映画である。

 そんなファンにとって、実に嬉しい秀作な一篇。
2013/01/05(土) 14:03:13 大映 トラックバック:0 コメント(-)

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