0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「月給泥棒」

 岡本喜八「月給泥棒」、

 宝田明はカメラ会社の営業マンだが、出世計算器と呼ばれる抜け目のない男だった。

 ある時、人事部長が息子の高校入学に難航している話を聞くと、裏口入学のコネを見つけてきて、課長補佐に昇進する。

 その後ライバル会社のOLから、ザバール国のジェリー伊藤がカメラの買付けに来日する話を聞くと、その歓迎会にクラブのホステス・司葉子と乗り込んで、ジェリーが司に夢中になると、それを踏み台にして自社製品を売り込みまくる。

 宝田の営業作戦を聞いた会社側は全面的に応援すると言ってくるが、ある時ジェリーに宝田のいろんな嘘がバレはじめる。




 岡本喜八の抜け目ない営業マンを描いた喜劇映画。

 宝田明は最後の最後まで出世欲旺盛で抜け目ないこと甚だしい奴だが,なぜか嫌な奴な感じはせず、寧ろあの手この手で大きな取引相手を手玉に取ろうとしたり、失敗したり、はたまたちゃっかりうまいことやったりするところに微笑ましさがあり、まあこういう話をそういう感じで撮れてしまうのはやはり岡本喜八の手腕というか個性故だろう。

 ここでの宝田は植木等の無責任男ほどおおらかなキャラではなく、他の映画だったら最後の顛末に至るまで悪役として描かれてもおかしくないほどだが(実際、鈴木英夫の「その場所に女ありて」の悪役的な山崎努とやってることは大差ない)、それでもスレた感じの司葉子との掛け合いも愉しく、映画自体のテンポもいいので面白く見ていられる。

 ちょっとスマートに展開しすぎてメリハリが足りないように思えるところもあるが、終盤は宝田が司に対する恋愛感情とビジネスの板挟みになる人間的な展開になるも、やはり抜け目なく終わっていくところが面白く、ビジネス的抜け目なさの駆け引きが、司と宝田の恋愛的な駆け引きと重ねて描かれているので微笑ましく見えるのだろう。

 岡本喜八らしさがわりと感じられる、中々快調な一篇。



どぶ鼠作戦 [DVD]どぶ鼠作戦 [DVD]
(2010/05/28)
加山雄三、佐藤允 他

詳細を見る





  2012/12/23(日) 14:04:35 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://shoheinarumi.blog18.fc2.com/tb.php/1197-d0c2a98b