0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「天才詐欺師物語 たぬきの中の狸」

 山本嘉次郎「天才詐欺師物語 たぬきの中の狸」、

 小林桂樹はセコイ詐欺師で、たばこ詐欺などを繰り返して追いかけ回されていたが、ある時捕まる。

 三木のり平の刑事に取り調べられ、2年半服役してシャバに出るが、小林の妻・淡路恵子は随分薄情な女だった。

 しかし小林には子供がいるので別れられなかった。

 性懲りもなく小林はその後背広を騙して拝借して、すぐに三木に捕まるが、その後防犯会長だった被害者の紳士服屋の店で小林は働くようになるも、真面目にやっていても給料が貰えず、そうこうするうち娘が母・淡路が他の男と浮気している間に万引きをしてしまったため、小林は淡路に愛人と手を切らせるため、店の金を与える。

 しかし淡路には金を持って逃げられ、店主からは随分搾取的な冷たいことを言われる。




 小林桂樹がセコイ詐欺師を演じている犯罪喜劇映画。

 途中森繁が小物のくせにやたら大物ぶる犯罪者として出てきて終いには小林と強盗をやるが、三木のり平の刑事とこの森繁以外は、小林の妻の淡路もロクでもない悪女だし、防犯会長から最後に小林と結ばれたかと思われた司葉子まで悪人ばかりで、喜劇的にユルく描いてはいるが、これをシリアスに描いたらノワール犯罪映画になったろうと思えるほど悪人ばかり出てくる。

 おまけに小林もしょっちゅー詐欺を行っては逆にすぐ騙される、という畳み掛けるコンゲーム的展開になっている。

 その騙し騙されの様相は、今鳴いたカラスがもう笑う、みたいに騙されたら誰かを騙し、騙したら今度は自分が騙される・・の連続展開で、それを随分明朗な喜劇タッチで描いている。

 小林も三木も森繁も中々好演しているが、かなり質の悪いビッチな小林の妻役に淡路恵子がピッタリで、この人は悪女役が一番似合うと改めて思う。

 まあ一番酷い女は淡路より司葉子だろうが、しかし司の出番は終盤ほんの少しでそれほど出てくるわけではない。

 結局、セコイ詐欺師からまったく足が洗えず、最後は三木や警察を騙す相変わらずの小林が描かれて終わりだが、その辺も随分おおらかな喜劇タッチで描かれている。

 題材とタッチは真逆なものだろうが、それを融合させてわりとテンポのいいコンゲーム的な犯罪喜劇映画になっている一篇。


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2012/12/19(水) 14:11:00 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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