0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「燈台」

 鈴木英夫「燈台」再見、

 柳川慶子はかって家族でやってきた燈台のある街を見ながら回想する。

 兄・久保明と父と義母の津島恵子とともにこの地にやってきた柳川はいつも兄と過ごしていたが、兄の気持ちは義母の津島の方にあり、ある本の落書きにまで義母の名前を書くほどだった。

 隠している兄の気持ちに気がついている柳川は、そのことを久保以外には誰にも言わないでいたが嫉妬の気持ちもあった。
 
 だがある時義母と兄と三人で一緒になる機会があり、その際に津島は久保の気持ちを知ってしまう。




 

 三島由紀夫の原作を映画化した作品。

 お得意のサスペンス映画だけでなく、「旅愁の都」のような恋愛映画だろうと、「目白三平」シリーズのようなホームコメデイだろうと、いつもノワールチックなサスペンススリラーのドス黒い緊迫感を充満させてしまう鈴木英夫のタッチがこの文芸映画にもあり、まるで心理サスペンス・スリラーをノワール的に描いたような文芸映画になっている。

 しかしそれが三島由紀夫の原作には合っているようで、わりと必然的にこのタッチで描かれているようにも見え、ホラーチックなスリラー映画のようなサントラも題材によく合っている。

 言わば家族間の微妙な恋愛心理関係を描いた文学を、ノワール的な心理サスペンス・スリラータッチで描き直したような映画だが、そこに中々の心理的な緊迫感が生まれていて、実に鈴木英夫らしい映画になっている。

 妹の複雑な近親相姦的恋愛感情と、久保の義母に対する背徳の恋愛感情、それを知った義母の緊張…などなどの心理関係の緊張が描かれていて、狭い人間関係の中の不気味な宇宙感を巧みに描出している。

 最後も実に意味深なスリラーじみた終わり方をし、異色の文芸映画ともいえる鈴木英夫らしい佳作な一篇。


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  2012/12/18(火) 14:15:53 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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