0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「二階の他人」

 
二階の他人 [DVD]二階の他人 [DVD]
(2008/07/25)
小坂一也、葵京子 他

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 山田洋次「二階の他人」再見、

 小坂一也は兄から借金して家を建てたらそこは会社の部長の隣で面食らったが、その家の二階を人に貸していた。

 しかし平尾昌晃夫婦は家賃を滞納し続け、平尾はかって学生運動をやっていた過去をチクられて会社を辞めていて就職活動中だった。

 小坂は不憫に思い、平尾の就職の世話をするが、しばらくすると平尾は会社に行かなくなり、小坂は自分のとこに流れてきた兄の家にいたはずの母と博打ばかりやっているグータラな平尾に怒る。

 なんとか平尾を押い出そうとして、皮肉にも警官の勧めで平尾を殴って追い出す小坂だが、実は平尾夫婦は下宿荒らしの常習で家賃をハナから払う気がなかったことを後で知る。

 次の間借り人は外交評論家を名乗る逆にやたらな金持ちだったが、小坂よりも金持ちなので相手の希望で風呂を作ってもらい、母の話で兄と喧嘩した小坂は借りた金をすぐ返さなくてはならなくなり、この間借り人の金持ちに借りる。

 だが、評論家なのに原稿を送ったところを見たこともなかった金持ち間借り人の正体を知ることになる。



 


 多岐川恭原作、野村芳太郎と山田洋次脚本の山田洋次のデビュー作であるSP映画。

 話の展開が面白く、やっかいな問題だらけの間借り人ばかり抱え込んで右往左往する小坂夫婦を描いているシニカルな喜劇映画。

 やはり山田洋次はこういうシニカル喜劇が一番巧いと思うが、どうもイメージのいい映画ばかり撮りたがり、そっちの方が世間受けがいいのが残念なのだが、これは木下恵介もそうだが、松竹の大監督の特徴だろうか。

 どちらも明らかに風刺的だったりシニカルだったりブラックだったりする方の作品の方が面白いと思うのだが、どうも世間はイメージのいい映画のイコンに木下や山田をしておきたいんだろうとしか思えないところがある。

 簡潔な展開と皮肉の効いた描写、今下宿荒らしを追い出したのに、今度は自分より金持ちだが訳ありの犯罪者に風呂を作ってもらい、大金を借りてしまって右往左往する小坂夫婦の姿をシニカルな笑いで巧みに描いている。

 一作目でこれだけの映画を撮ったんだから、まあ山田洋次が後に巨匠となるのも頷けるところがある。

 最後の最後まで意味深な描写が夫婦の間に流れ、決して単純なハッピーエンドで終わっていないところも秀逸である。

 デビュー作にして才能がよく出ている、中々よく出来ている秀作な一篇。
2012/12/17(月) 13:35:34 松竹 トラックバック:0 コメント(-)

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