0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「下町 ダウンタウン」

 千葉泰樹「下町 ダウンタウン」、

 山田五十鈴は夫がシベリアの戦線から帰ってこず、生活に困って静岡のわりと高価なお茶を訪問販売していたが、なかなか売れなかった。

 子供抱えて苦労していたが、ある時工事現場の小屋のようなところに住んでいる三船敏郎のところに行った時親切にしてもらい、お茶まで買ってもらう。

 山田は住ませてもらっている売春などを影でやっている旅館の女将の知り合いの多々良純に言い寄られていたが、女将はよくしてくれる方だった。

 ある時また三船と再会する山田だが、徐々に仲良くなっていき、シベリアの夫のことを気にしつつもついには男女の仲になってしまう。




 
 林芙美子の原作を映画化した作品。

 お茶を売り歩く苦労人で真面目な山田五十鈴と三船敏郎が出会って仲良くなっていくシーンがとてもよく、出会った頃から貧乏しつつもこの三船の小屋で3人で幸せに暮らせばいいのに…と思わせるが、現実は皮肉に悲しい方向に向かっていく。

 山田五十鈴がシベリアの夫を気にしながら三船に惹かれていく役を好演しているし、三船敏郎も男っぽいが優しい人情ある男の役にピッタリで中々いい感じの苦労人同士の恋愛映画になっている。

 周りの売春を影で斡旋している女将も山田に言い寄る多々良純も悪人ではなく、明確な悪役は出てこないが、最後はやっと山田が小さな幸せを感じ始めたのに、三船は不意の事故で死んでしまう。

 映画自体もあまりに唐突に三船が死んだように切断的に描いていて、そこで山田の人生の幸福も切断されたように描かれている。

 山田と三船の真面目な苦労人同士の描写が、美しいモノクロ映像に清々しく似合っている、味のある佳作な一篇。


下町下町
(2012/09/13)
林 芙美子

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2012/12/13(木) 14:20:06 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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