0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「十八歳、制服の胸元」

 国沢☆実「十八歳、制服の胸元」再見、

はらだはるなの女子高生は屋上から下を見下ろして自殺しようとしているようだったが、 そこへ寺西徹がやってきて飛び降り自殺しようとしたので、 隠れていたはらだは咄嗟にふざけて寺西に声をかけて自殺を食い止める。
 
 どちらも問題を抱えているような二人だったが、途中はらだの同級生の橘瑠璃が援交をやっている現場に出くわす。

 実は寺西は元作家だったが、彼が一冊だけ出した青春小説をたまたまはらだが知っていてファンだったことから、寺西はまた一度挫折した作家を目指すとはらだに約束し、お互いメールでエールを送り合うが、現実には全く二人ともうまく行かなかった。



 

 ぞれぞれ絶望した中年男と女子高生を描いた映画。

 冒頭に両者がそれぞれ飛び降り自殺しようとしているので、それでお互い絶望的状況にあることが伝わってくるが、その後も寺西もはらだも現実の壁にぶつかり、気持ち的にも現実から目をそむけないと生きていけないほどである状況にあることがよくわかる。

 二人は自殺しようとした現場で遭遇した縁で、それぞれメールで励まし合っていくが、両方ともなかなかうまくいかず、はらだが援助交際を無理矢理森羅万象の中年男に迫られても、それを止めようとした寺西は無様に叩きのめされてしまう。

 しかし最終的には仕事もなく家庭もうまくいかず、はらだと約束した小説も書けずにいる寺西も、何も現実を変えられないはらだも、その二人の交流があることだけで何とか立ち直って日々を生きていこうとして映画は終わる。

 メロウな映画だが、音楽などで扇情的に悲しさを煽ったりせず、淡々とした描写のみで、つまりドラマと演出と役者陣の好演の連携のみで、絶望的状況から弱々しくもなんとか生きていこうとする男女の姿を描いていてかなり秀逸である。

 かってははらだが憧れるほど輝かしい純粋な少年=自分を小説で描いた寺西が、その後中年になってどうしようもない末路を辿っているというのも悲しいが、最後、一瞬飛び降り自殺したかと思われた寺西とはらだがまた再会して結ばれ、そこには切実な繋がりだけが描かれているように見える。

 寺西の妻が未だ夫のことを気にかけていた描写も最後にはあり、わりとぬくもりのある映画になっているが、それぞれの男女の心の襞を、かわさきりぼんの脚本と国沢☆実の演出が丁寧に素描していて秀逸である。

 寂しいメロウさに彩られている映画だが、それでもそんな中で微弱だが小さな繋がりを通して、なんとか現実と向き合っていこうとする意思が描かれている秀作な一篇。


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2012/12/11(火) 14:04:13 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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