0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「肌色の月」

 杉江敏男「肌色の月」、

 乙羽信子は舞台女優だったが、ある時舞台「肌色の月」のヒロイン役を降ろされ、恋人の役者・仲代達矢にも捨てられたため自殺をしようとする。

 そのため自分は失踪したことにして、誰とも知れない人間として自死しようとする工作を施す。

 だが湖のある避暑地に行ってある男に車で拾われ、別荘で世話になるが、そのため夜間に湖で自殺しようとすることが困難になる。

 だが朝には別荘に男がいなかったので、乙羽は湖に行って自殺しようとするが、そこへ別の男がやってきて別荘にいた男が湖に飛び込み自殺したのではないかと言ってくる。

 警察が来て、自殺の捜査を始め、乙羽はいつの間にか男の愛人扱いにされてしまい、殺人の容疑すらかけられる。

 



  久生十蘭の原作を映画化したサスペンスミステリ映画。

 乙羽が自殺しようと放浪していたのに、いつの間にか他の人間の自殺にまつわる事件に巻き込まれ、次々と乙羽のそれまでの行動が容疑者に結びつけられていくサスペンス映画。

 言わば事件とは何の関係もない乙羽の人生の絶望ゆえの行動が、伏線的にその後巻き込まれた事件の容疑者としての怪しい行動として機能してしまい、乙羽がどんどん追い詰められていく展開である。

 その伏線の偶然的かつ策謀的な機能ぶりが秀逸に描かれているが、途中の薬が入っているジュースの瓶を巡るサスペンスもヒッチコックの「断崖」における白いコップのように機能し、じわじわとサスペンスを盛り上げていて、中々周到に作られたサスペンスミステリ映画になっている。

 ただ乙羽のキャラが自殺寸前で世をはかなんでいるほど弱く、ただ何の罪もなく巻き込まれ利用されてるだけの人間のわりにはふてぶてしくて生意気すぎ、その上証言すれば誤解が解けることも意地張って言わないのでさらに疑われていってしまうところはちょっとどうかと思うし、途中ある男に船で溺死させられそうになってるのに、その後その男の正体にもちゃんと気がついていないというのは、ふてぶてしいわりには間抜けだなと言うしかなかったりする。(苦笑)

 その他仲代達矢が随分嫌な奴として脇で出ていたりする。

最後は意外なほどあっさりカタがついて終わってしまうが、まあそれでも途中の謎や事態が蛇行する展開や、事件と関係ない行動が伏線として犯罪的に機能してしまうところはわりと面白かったりする。

 その意味では気になるところはあるものの、中々の秀作ではある一篇。


肌色の月肌色の月
(2012/10/04)
久生 十蘭

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2012/12/04(火) 14:18:11 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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