0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「ヒミズ」

 
ヒミズ コレクターズ・エディション [DVD]ヒミズ コレクターズ・エディション [DVD]
(2012/07/03)
染谷将太、二階堂ふみ 他

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 園子温「ヒミズ」再見、

 染谷将太は親が問題だらけだがボート屋をやっていて、そこには大地震で被災した人々が集っていたが、チンピラ風の父、光石研は絶えず息子を殴りに来ていた。
 
 学校で教師が夢を見ろだの言うのに対して「普通最高!」と叫んだ染谷を見て、クラスメイトの二階堂ふみは染谷に惚れ込み近寄ってくるが悉く染谷に邪険にされ殴り合いになったりする。

 しかし二階堂も家庭では親に自殺をほのめかされていて悲惨な状況にあった。

 ある時ボート屋にやってきた男がやたら染谷にシンパシーを感じているようなことを言うが、男は後に通り魔事件を起こす。

 そして染谷の親の借金を取り立てにきたでんでんに殴られた元社長で被災者の渡辺哲は、窪塚洋介に誘われて泥棒に入り窪塚ともめて暴行した後、染谷の親の借金を盗んだ金でんでんに返す。





 古谷実の原作を映画化した作品。

 テーマ的には園子温らしい子供を愛さない親とトラウマ抱える子供の話がメインで、それにまつわることが色々起こる映画なので、またこの話か…と思わせるところもあるが、それでも少々漫画チックに描かれるDV家庭の描写から飛ばしていって、震災後に無理につけたらしい震災後の人々の描写や通り魔がシンパシーを染谷に感じる挿話や、染谷がその後世の中の悪を撲滅しようと殺人鬼のようになっていく展開などに生々しいものがあり、結局は題材の根幹はこれまでの作品と似ているけど、これはこれでまた新しい園子温の映画になっている。

 まるで自身の原点やベースを絶えず確認しながら、そこからどうもがき、飛び出していくかということのプロセス自体を映画にしているような生さがこの映画にも感じられるが、その意味ではそれが映画という絶えず現在進行形の運動を描くものと野合することで迫力が加味されている感じがする。

 だから震災話を後からつけ足そうが、絶えず現在進行形でもがいている過程をこそ活写している映画なのだから、そこには当然現実のその後起きた問題は自然と繋がっていくから、震災話を入れたことにそう無理を感じさせない。

 さすがに染谷将太と二階堂ふみは怪演しており、他の園映画ではよく見る役者陣も好演しているが、終盤になってくるとこれだけ展開めまぐるしい映画なのに(勿論「愛のむきだし」や「冷たい熱帯魚」ほどではないが)、青春映画としてのオーソドックスな原型すら感じられるほどになり、意外なことに結構ちゃんとよくまとまっている映画になっていたりする。

前半ちょっと上滑りしている感じはあるのだが、それでも映画が進むほどに生々しいパワーに溢れていきつつ、ちゃんとドラマとしてまとまってさえいるというのは中々見事なもので、そんな秀作な一篇。


2012/12/01(土) 14:11:52 その他 トラックバック:0 コメント(-)

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