0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「恥辱の部屋」

 
恥辱の部屋 [VHS]恥辱の部屋 [VHS]
(1994/06/10)
風祭ゆき

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 武田一成「恥辱の部屋」再見、

 風祭ゆきは事故でインポになった個人タクシーをやっている夫・鶴田忍の妻だが、鶴田はセックスができないので夫婦の絡みをビデオに撮ったり、それをタクシー運転手の知り合いに見せたりして刺激を感じていた。

 だがそのビデオを見て興奮した北見敏之は、その後いきなり風祭に襲い掛かって関係を結び、鶴田暗黙の公認の不倫関係になっていく。

 だが一緒にビデオを見ていた金田明夫も風祭に惚れており、北見に許嫁がいることを風祭にバラし北見との関係を壊してでも自分が風祭と関係していこうとする。

 そしてそのことも夫の鶴田は黙認していた。



 


 インポになった夫と妻の奇妙な夫婦関係を描いた映画。

 最初は鶴田の撮る映像の中で恥じらいを見せ、いかにもいい妻に見える風祭だが、結局夫公認のもと、ビデオを見て自分に惚れこんできた男と不倫しまくる展開だが、絶えず不倫を黙認している夫・鶴田との夫婦契約のようなシーンが随所に入るので中々シニカルな感じがする。

 金田も北見も、真面目だがビデオを見て風祭に惚れる信実一徳も結局不倫をこの夫婦によって客観視され、喜劇役者のようにのた打ち回っているだけだという視点で描かれているが、最後はそれで夫婦が元に戻ったように見えて風祭は本当に消えてしまうのだから、結局鶴田忍も風祭の手のひらで「黙認」というパフォーマンスを踊っていただけということになって終わる。

 西岡琢也の脚本が面白いとしか言いようがないが、武田一成もいつもほど露骨に作家性は出していないがちょっとフェティッシュな描写などにらしさが出ている。

 70年代には大真面目にメロドラマとして描かれた不倫ドラマを、80年代的なポストモダンな俯瞰の視点でシニカルに描き、そこからさらに視点が転倒していくことによって、そのポストモダンな俯瞰の視点の磁場すら消滅して終わっていくという秀逸な視点転倒のドラマが描かれている佳作な一篇。
2012/11/17(土) 14:00:25 日活 トラックバック:0 コメント(-)

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