0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「愛情の決算」

 佐分利信「愛情の決算」、

 佐分利信は今は年下の部下に使われてうだつの上がらないサラリーマンになっていたが、戦争中は軍隊で勇猛に生きていた男だった。

 しかし義理の息子には慕われるものの妻の原節子には離婚したいと言われる。

 お話はそこから戦中の佐分利から現在の佐分利の姿までを回想的に描いていく。

 終戦後、佐分利は子供のいる原と結婚し面倒を見るが、働いていた出版社のリストラに遭い足をけがしたのもあって働けなくなる。

 代わりに妻の原が働き出すが、その世話をした佐分利のかっての軍隊時代の部下、三船敏郎と原は恋仲となっていき不倫に走る。



 

 佐分利信監督、主演の、戦後すぐの夫婦映画。

 佐分利はいつもの役のようで、どこかいつも脇で出ている時はちゃんと描いてもらえない男の気持ちを自ら掘り下げて描いているようで、中々独特な映画になっている。

 原節子の言い分もわからんでもないが、それでも佐分利の献身的な態度が時代遅れな人間の態度と言われ出すところから見ると、少々佐分利よりは現代的な原が不倫の悪女っぽく見えんでもない。

 三船も原同様決して悪人ではないのだが、不倫されてそれに耐える佐分利の心理がメインで描かれているので少々身勝手にも見える。

 最初現代のシーンが入り、その後回想的に過去が語られ、最後にまた冒頭の現代のシーンに繋がっていく描き方だが、佐分利はそこそこうまく描いてはいるものの、自主映画的なショットの短さやつなぎ方がわりとあるからか、少々描き方が今風に見えたりしないでもない。

 渋く黙って全てをわからせようとする名優が、やはり自分で監督して主演するとその寡黙な男の胸の内をメインに描くとはいかにも一度やりたかったことを思い切りやってる感じだが、それゆえにいつも主役を張っているがこの映画では脇役のスター役者たちもちょっと異色な役どころとなっている。

 ラストは、かっては一番家族円満だった夫婦が壊れ、戦後の混乱でやくざな暮らしをしていたビッチ女が普通の幸せな主婦になっている構図で皮肉に終わっていくが、この終わり方も中々いい。

 佐分利が主演し、そのいつもあまり描いてもらえない切実な内面がちゃんと描かれたことで、多くのスター俳優主演の夫婦の映画とは少し視点が違う映画にも見える佳作な一篇。


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佐分利信、菅原文太 他

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  2012/11/12(月) 14:04:26 東宝 トラックバック:0 コメント(-)

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