0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 瀬川昌治



瀬川昌治監督が亡くなった。

日本の喜劇映画の最高峰監督だった。

初期の「ぽんこつ」「拳銃野郎に御用心」の頃から、軽妙に喜劇を展開させる手腕を見せていた。

有名な「旅行」シリーズや「列車」シリーズ「喜劇 男」シリーズの頃になると、見事に脂の乗り切った演出で、さらにテンポよく喜劇映画を展開させた。

これらのシリーズ作は、前に何度か観ている作品であっても、よく旅行先の観光バスのモニターにてたまたま映し出されて再見する機会があったが、それをバスの中で再見していても面白く観れたものだった。

後年の作品では「トルコ行進曲 夢の城」や「哀しい気分でジョーク」など、下層の人間のプロ意識をよく描いていたが、どこか最盛期の作品とは違い、自己言及的な作品に思えた。

思えば瀬川監督は、テレビドラマも映画も凄腕の職人技で傑作を作ってきた超プロフェッショナルだが、御大層な映画賞や映画芸術的評価とはあまり縁がなかったと思う。

あくまで大衆娯楽としての職人技の喜劇映画をたくさん作った人だから、後年の映画の主人公像というのは、大衆の中の、芸術家としてありがたがられたりはしないけど、社会の下層にまで視野を広げてプロフェッショナルな喜劇映画を作ってきた瀬川監督御自身の投影だったのかもしれない。

やはり簡潔な描写とテンポのいい切れ味の描写がプロフェッショナリズムの域に達していた監督だったが、遠藤太津朗が主演した「三等兵親分」は、まるでラオール・ウオルシュの戦争喜劇映画の傑作と双璧を成しているか、あるいはそれ以上の切れ味鋭い喜劇映画であり、これはやはり瀬川監督の最高傑作にして、集大成の作品だと思う。

また蔵原惟繕の大傑作SP映画「ある脅迫」の脚本も実に見事なものだった。

その他、前に評を書いた「虹をつかむ恋人たち」、「暗黒街シリーズ 荒っぽいのは御免だぜ」や、「瀬戸はよいとこ・花嫁観光船」「密告」「アッと驚く為五郎」他なども良かった。

「喜劇役者たち 九八〜クーパーとゲーブル」ではタモリが精神に異常がある芸人を演じていたが、まるで後のリアル芸人・ハウス加賀屋の登場を予見していたかのような、ちょっとした異色作だった。

テレビドラマも1960年代半ば頃からかなりの数の作品を演出されていたが、「HOTEL」は「列車」シリーズをどこか彷彿とさせる喜劇ドラマだった。

その他「夜明けの刑事」」「ザ・ガードマン」「Gメン'75」「キーハンター」「バーディー大作戦」「赤い」シリーズなどなどの演出もされていた。

実にハイレベルなプロフェッショナル職人監督だったと思う。

瀬川昌治さん、ご冥福をお祈り致します。









2016/06/28(火) 01:34:08 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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