0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「暗闇から手をのばせ」

 戸田幸宏「暗闇から手をのばせ」、

 小泉麻耶は障害者専門のデリヘル嬢で、津田寛治のマネージャーと共に障害者の家に訪れて仕事をしていた。

 その先々で客の障害者から辛い病状や障害の状態を聞くことになる。

 ある日バイク事故で性機能を損傷してしまった若者の話を聞いて、小泉は後日勝手に若者の家へ行き、そこで若者の友人カップルが暇つぶしで障害者見物に来ているのを見て怒りをぶつけるが、後で津田に叱られる。




 先日ゆうばりファンタスティック映画祭でグランプリとシネガーアワードをW受賞した作品。

 障害者専門のデリヘル嬢を描くというのは、これまでにっかつロマンポルノでもピンク映画でも、ありそうであんまりなかった設定だが、しかしそれ故にドキュメントタッチに近い生々しさと緊張感で描かれたこの映画は、孤独に自分の障害と向き合っている人々の悲しみや寂寥や絶望感、またはつかの間の生に悦びを見いだす瞬間がデリヘル嬢の小泉の反応と心の揺れ動きを通してメロウかつ繊細に描かれていて実に秀逸である。

 それにしてもグラドル・小泉麻耶が信じられないほど見事な好演をしているのには驚かされた。

 この小泉のデリヘル嬢は、障害者たちを最も癒やしている存在なのに、プライベートでの接触は禁止されたりするし、介護や福祉という風には全く思ってもらえず、友達になってほしいとまで言ってきた客の障害者が死んでしまうと、遺族からは汚らわしいデリヘル嬢として罵倒されたりするのだ。

 その死期に一番身近にいた存在なのに亡くなったことも知らされず、お悔やみを言うことすら許されず気持ち悪い存在という扱いを受けてしまう。

 あまりに卑劣な、障害者を見世物見物する偽善的な友人カップルに怒りまくっても、デリヘル嬢が出過ぎた真似をするなと言われるだけである。

 実は前の店でモロ諸岡の客からストーカーされていて、そこから逃げていてまた捕まってしまう小泉だが、最終的には津田に助けられて捕まったストーカーのモロの面会に行き、店で自分を贔屓にしてくれていたことを感謝する。

 それは小泉が、自分という存在を唯一の生の悦びとしてつかの間の至福を感じてくれている障害者たちの立場と気持ちを思いやれるようになったから言えた感謝であり、ここで小泉は自分を監禁し傷つけようとしたストーカー=モロの孤独を包み込もうとしているのだろう。

 独特のリアルな存在感を見せながら、繊細に人の気持ちを思いやっていることを、小泉麻耶は絶妙かつ微妙な気配にて表現し得ていて、なんとも素晴らしい名演を見せている。

 脇の津田寛治やモロ諸岡も好演しているしリアル障害者のホーキング青山がこの映画には大きく貢献して好演していると思うが、戸田監督の生々しいドキュメントタッチと独特の静寂に満ちた緊張感、それと繊細な表現で微妙な思いやりの気持ちをさりげなく描き込める才能がやはりなんとも素晴らしい。

 と同時に小泉麻耶のリアルさと繊細さがない交ぜになった名演がやはりとても光っている、グランプリ受賞も当然と言える、堂々たる傑作な一篇。


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小泉麻耶、籠谷和樹 他

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2013/02/28(木) 02:28:27 その他 トラックバック:0 コメント(-)
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