0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 新藤兼人

 
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 新藤兼人氏が100歳で亡くなった。

 脚本家としても監督としても活躍された大巨匠だが、個人的には「裸の島」や「狼」、夏目漱石原作の「心」他のような好きな監督作もあるものの、脚本家としての作品の方に妙に愛着があったりする。

 初期の師匠格・溝口健二の「女性の勝利」「わが恋は燃えぬ」にはすでに確実に新藤氏らしさが出ていたし、その他共同脚本の「夜の鼓」や、ふけ専恋愛喜劇のような「脱線情熱娘」、「殺人鬼」、中平康の「狙われた男」、「昭和枯れすすき」なども面白かった。

 異色の問題作「誰が私を裁くのか」と新東宝の「胎動期 私たちは天使じゃない」や、「村八分」「姉妹」のような農村社会の問題を描いたものにも、新藤氏らしい問題意識が明確に出ていた。

 他に増村保造と組んだ「氷壁」「清作の妻」「刺青」「不敵な男」「千羽鶴」などはどれも見事な作品で、特に「氷壁」と「千羽鶴」は特筆に値する異様な傑作である。

 また川島雄三の大傑作「しとやかな獣」、清順の「けんかえれじい」も素晴らしく、勝新主演の「酔いどれ博士」「酔いどれ波止場」なども面白かった。

 だが新藤氏脚本の個人的な最高傑作はやはり大庭秀雄「偉大なるX」である。

 新藤氏らしい問題意識とシニカルな設定、いつの時代にも通じるような社会変革への夢とその絶望の様相を実に巧みかつ意味深に描き上げている傑作で、新藤氏らしさが見事如実に出ている作品である。

 反核問題を絶えず胸に抱きつつ、100歳まで映画人生を全うし大往生された、まさに偉大な映画人であった。

 新藤兼人さん、ご冥福をお祈り致します。


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2012/05/31(木) 03:59:35 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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