0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「殺人者」

 安田公義「殺人者」再見、

 安田(現・大楠)道代は金持ちの娘だが、ある高価な絵を手に入れようと親の金に手を出したことを咎められ、島流しのように北海道の別荘住まいをさせられる。

 だがその近所には愛人をしているドSな江波杏子がいて、安田は犬と散歩中、江波の大きな犬に襲われたり、車で轢かれそうになる。

 頭にきた安田は江波の車のタイヤをパンクさせるが、その頃銃声がして江波が殺されていた。

 そして殺したとおぼしき石立鉄男が安田の屋敷に潜り込んできて潜伏し始めるが、徐々に安田は石立に親近感をおぼえていく。



 

 原田康子の原作を映画化したサスペンス風恋愛映画。

 まるでストックホルム症候群に陥ったように、安田は自分を人質に籠城する石立に惚れていってしまうのだが、その惚れ方がかなり強烈で、捜査に来た刑事の宇津井健にことごとく反発する。

 まあ宇津井健の刑事はやはりいつものさわやかな正義漢ぶりなのだが。

 石立が江波の悪女に翻弄されて殺人を犯してしまった田舎出の男の役によく合っているので、まあ安田がそうなっていくところに多少の必然性が感じられんでもないのだが、それでも明らかに安田はある症候群に閉じた場所でハマっているようで、最後は石立を包囲した刑事たちに自ら猟銃を向けるまでにエスカレートし、石立が絶望して自殺してからも、また自分を猟銃で人質に取る男が現れたら恋したいみたいなことを言って終わっていく。

 一応悪女役にピッタリな江波という共通の敵がいたことでそうなっていったとも言えるし、最後も自殺した石立を思っての感慨なんだろうが、それでもちょっと安田が過剰すぎるので不思議な感じがする映画ではある。(苦笑)

 全編情緒的な音楽が流れて、そんな状況をさらに煽っているところがある一篇。


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(2008/03/27)
石立鉄男

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  2012/04/30(月) 14:05:40 大映 トラックバック:0 コメント(-)
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