0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「もしかしたらバイバイ!」

 高畑鍬名 滝野 弘仁「もしかしたらバイバイ!」、

 佐藤美沙は姉の婚約者を寝取ったことで家族に忌み嫌われ、姉は佐藤を見ると吐くようになり、顔を合わせないようにさせられていた。

 通っている予備校では彼女のいる石崎チャベ太郎のセフレとよく一緒にいるので顰蹙を買い、ヤリマン女として評判が悪かった。
 
 その頃佐藤は泣き男と言われる宇野祥平に遭遇する。



 

 園子温や横浜聡子の弟子格にあたる監督の共作。

 恋愛映画というよりはにっかつロマンポルノ的、青春映画と言うには錯綜しているが、それでもどのシーンにもそれなりの緊張感があり、ほとんど感情移入し難いヒロインを主役に据えているのに、寧ろ感情移入や同情を拒否して生きている女の生な生き様が描かれ、わりと伝わってくる映画になっている。

 映画やドラマは基本主人公を感情移入しやすいものに設定した方が楽だし得だろうし、プロの作り手でもそれに甘んじて作っているところがあるし、そんな観客の同情引くのがうまいキャラをどこまで設定出来るかでプロであるか否かを語っているような平板な映画人すらいるほどだが、これはその点ではちょっと難しい題材やキャラ設定に挑んでいると思うが、それをここまでの映画にしているのはやはり実力があるからだと思う。

 ヒロインは自己チューで無茶苦茶な奴のようで、実は自分が悪者になって何もかも我慢しているようにも見えるし、それが裏目に出てどうにもならなくなっていく女を描いているようにも見えるところがある。

 だから単に悪女を描いているという風ではなく、通常だと悪役的なキャラを主役に据えることで、従来のトラウマ悲劇映画を別の視点で描いているような感じが出ている。

 ひょっとしたらこのヒロインは自分が悪役になってまで姉を守ろうとしていたのかもしれないのに、逆に傷つけてしまったようにも見えるのだが、だからか、そこで姉とヒロインの関係が最悪になってしまったのを感じて「もしかしたら バイバイ!」と姉に別れを告げたのかもしれない。

そのシーンには哀愁に満ちた哀感が出ていて、中々独特の映画になっている佳作な一篇。


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2012/03/31(土) 14:12:24 その他 トラックバック:0 コメント(-)
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