0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「蟻が空を飛ぶ日」

 野火明「蟻が空を飛ぶ日」、

 黒田耕平は「会社」に属して、先輩の近藤善揮らと共に、会社の命令で人を拉致したり殺したりしていた。

 ある時一人の男を殺そうとするが、男は愛人・焼広怜美のところへ変装して出かけるも、黒田が張り込む中、焼広に男は殺されバラバラにされてしまう。

 現場を見た黒田と、焼広は争うが、そこに近藤がやってきて死体を処理、焼広は拉致されて会社の殺し屋になるよう指示され、そのために一緒に捕まっていた女性を殺すはめに。

 その後黒田と焼広は、会社から近藤を殺すよう命令される。


 

 不思議なタッチの殺し屋映画。

 およそハードボイルドだとかアクション映画という感じのタッチではない、淡々とした描写で描かれていくが、それはどこか黒沢清が一時期撮っていた活劇を想起させるも、黒沢の影響という感じはあまりなく、独特のドライテイストが全編にある。

 最初は元殺人者ばかりを集めた「会社」のメンバーによる殺しの様子や焼広の派手な殺人が描かれてノワール映画的な感じも多少あるが、途中近藤を殺すという話に展開していくと、どこか明るい青春恋愛映画のようなテイストになっていき、そういうタッチで殺し屋同士の殺し合いが描かれていく。

 異色な感じの映画なのに、意外とちょっとお話が定番っぽい気もするが、黒田耕平も近藤善揮も焼広怜美も皆個性に満ちた好演を見せており、それが映画の独特のドライなタッチを体現しているところもある佳作な一篇。


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焼広怜美、本多菊次朗 他

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  2011/02/28(月) 11:48:45 その他 トラックバック:0 コメント(-)
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