0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「七人の刑事 終着駅の女」

 若杉光夫「七人の刑事 終着駅の女」再見、

 上野駅で女が殺されるが、この女の身元が分らない。

 どうやら北の方に帰るつもりだったらしいが、その後何度か人探しをしている人たちが女の死体を見に来るも該当者はいなかった。

 しかしある時、署にやってきた笹森礼子が急に何も言わず姿を消したことを怪しんだ刑事の天田俊明は笹森を尾行するが、笹森が何者かに殴られたので詰め寄って話を聞こうとすると逃げられ、笹森はそこで事故に遭ってしまう。
 
 その後笹森は天田が一瞬目を離した隙に逃げてしまうが、事件の裏には暴力団の売春組織の影がちらついた。


 
 「七人の刑事」の劇場版のようなもので、キャストも芦田伸介らが活躍し、まだ中年期の大滝秀治の刑事が「特捜最前線」の船村刑事ばりの芝居をしているが、何といっても目を見張るのはプログラムピクチャー的に撮られているのに、明らかにエキストラとかを使った撮影所的なものではなく、ヌーヴェルヴァーグ映画かドキュメンタリーのように現実の街に刑事たちが出て行って捜査しているシーンが多い、そのリアリティである。

 後の刑事映画や刑事ドラマにはそういう手合いのものも珍しくないが、60年代のモノクロプログラムピクチャーでそれを実験的にやっているので、その古いスタイルの演出や映画作法とドキュメンタリーやヌーヴェルヴァーグ的なものとの野合ぶりが今見てもとても新鮮に感じられるのである。

 おまけに最初の被害者の身元捜しのシーンなどにも、何人も身元確認に訪れるのにいつまでたっても身元がわからないところに妙なリアルさがあって、映画自体、お話や展開はよくある刑事もの的なのに実に生々しい手触りのある刑事映画になっている。

 ざわつく駅構内や街の匿名の人たちのノイズや声・・・それらが意図的にリアルな効果を上げており、ドキュメント的なタッチを野心的に強調した出来になっている異色な一篇。



収録の船村刑事(大滝秀治)主演エピソード「子供の消えた十字路」は傑作
当時月刊「ドラマ」にこの一話の長坂秀佳脚本が掲載されたが、その見事な変則的誘拐サスペンスとしてのシナリオの出来栄えにも驚いた。
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(2007/03/21)
二谷英明大滝秀治

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2009/10/31(土) 14:08:12 日活 トラックバック:0 コメント(-)
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