0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断』




橋本一『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断』、

7年前、英国の日本領事館で集団毒殺事件が発生。
一人生き残った少女は国際犯罪組織バーズに誘拐され消えてしまう。

7年後、杉下右京=水谷豊と冠城亘=反町隆史の特命係の二人は、バーズを追う鹿賀丈史と共に捜査するが、バーズの情報を掴んだ捜査官が殺される。

その頃、日本政府に対し、消えていた少女の身代金が要求されるが、日本政府はバーズをテロ組織と認定し身代金要求を拒否する。

そのためか、バーズは50万人が集まる国際スポーツ競技大会のパレードを狙うテロ計画を立てる。

パレードが行われる最中、杉下と冠城は犯人の正体を独自に推理し、追跡する。

事件は70年前のある真実に繋がるものだった。




テレビドラマ『相棒』シリーズ劇場版の第4作。

現在の4代目相棒・冠城亘=反町隆史の劇場版初出演作でもある。

個人的には『相棒』 劇場版の最高傑作だと思う。

前作の3作目がどうにもイマイチだったので、それに比べればかなりの出来栄えである。

『相棒』らしいミステリ的要素を絶妙に盛り込んだスピーディーでテンポの良い展開、

蛇行し変化していく物語と事件の真相、

そしてクライマックスのパレードにおけるサスペンスアクション展開に至るまで、一気に見せる面白さである。

その上でラストには、70年前のある事実にまつわる真相が開示されるが、ここで物語の真相的主題が本格ミステリ的推理の果てに大ドンデン返しのように発覚する。

(ここからは少しネタバレ注意)

このラストに示されている事は、かなり意味深である。

通常、愛国心と反戦思想は対立概念として語られ議論されることが多い。

しかしこの映画は、21世紀の戦争であるテロの時代において、反戦思想の教訓として、テロ対策としての愛国心が描かれるのである。

展開は『相棒 劇場版』第1作に似ているし、テレビシリーズの『相棒 』Season14 元日スペシャル「英雄」で語られた主題とも通底しているように思う。

だがこの映画は、そこからさらに発展した結末を迎えている。

これをただの刑事サスペンスアクション娯楽映画と見るだけなら、銃撃戦やアクションシーンの盛り上がりに欠けるエンタメ作品という風に見えてしまうかもしれない。

しかしこれは、やはり、れっきとした『相棒』の映画版なのである。

「かっての戦争に対する反省としての反戦思想を、21世紀の戦争であるテロを防御するための愛国心として生かす」ということを語っている者など、そんなにいるだろうか。

現在の政治討論番組を見ても、相も変わらず、保守派の戦意高揚と、21世紀の戦争を甘く見ている反戦思想のリベラル派の二元論的小競り合いが未だに反復されているのが現実ではなかろうか。

だがこの映画は違う。

反戦思想を教訓として、21世紀の戦争に愛国心を持って対峙し、その教訓を生かすという、先の二元論を超えた、反戦思想と愛国心が表裏一体であることの重要性を、本格ミステリ的謎解き展開と、伏線の回収技にて導き出し、たどり着く映画になっている。(そしてこれが、ポスターに書かれたコピー「あなたは、生きるべきです。」の真意に繋がっていく)

これまでの世界映画で、およそこんなことを語った映画は稀有ではないかと思う。

もちろんこの映画にも瑕疵はあり、真犯人は最初からなんとなく察しがつくし、救助した少女を管理する似顔絵警察官の体たらくや、パレードの警備員のだらしなさはいかにも漫画チックである。(わざとやってるのかもしれないが)

また活劇展開がちょっとあっさり気味で、物々しく登場するテロリスト側の北村一輝が後半すぐ捕まる呆気なさも気にはなる。

だが先にも述べたように、この映画は一つの意義を見出していると思う。

『相棒』TVシリーズを支えてきた太田愛の脚本は見事だと思う。

劇場版らしい、陰影に富んだ映像も悪くないし、主役の特命係の二人、水谷豊と反町隆史も実に好演している。

また出番は少ないが、かってのレギュラーで、鑑識ではなく警察学校の教官として登場の米沢=六角精児や、元相棒の神戸尊=及川光博も映画に花を添えているし、川原和久や山中崇史の刑事コンビもちゃんと大事なところで活躍、その他片桐竜次や小野了、鈴木杏樹、石坂浩二、山西諄、神保悟志、仲間由紀恵、志水正義、久保田龍吉などなどのレギュラー陣もいつも通りに好演している。

それにしても大物政治家役の江守徹は、かなり見た目が変わっていて、最初江守徹に見えなかったが。

個人的には『相棒』劇場版最高傑作と評価したい一篇。 2017/02/14(火) 00:01:54 東映 トラックバック:0 コメント(-)

「七色仮面 レッドジャガー 最後の切り札」

飯塚増一「七色仮面 レッドジャガー 最後の切り札」、

ブラックハンド一派は世界のダイアモンドの多くを奪取しており、日本のダイアも狙っていた。

だが警視庁捜査一課は、ついに波島進=七色仮面の協力を得て、ブラックハンドのアジトを包囲する。

そこへ香港からブラックハンドの総帥がやってきて、内部抗争が巻き起こる。



川内康範原作のTV「七色仮面」24話から25話を再編集した劇場版作品。

散々ややこしいスパイ戦じみた錯綜展開だったお話も最終話的なこの作品でなんとか決着がつくが、それでもヒーロー七色仮面を脇で地味に活躍させながら、最後までややこし展開は顕在で、決着は一応つくものの、内部抗争も結末も最後までまたまた蛇行した展開である。

だが敵の黒幕が誰かだいたい察しはついていたものの、こういうガキ向けのヒーローものでこの黒幕の正体というのは中々頑張っている方とは言える。

七色仮面が事件を解決してはいるが、結局最後まで地味で、悪の組織の描写メインに見えるところが個性と言えば個性だろう。

そういう意味では、それなりに見ていられる一篇。


2015/08/01(土) 03:47:38 東映 トラックバック:0 コメント(-)

「七色仮面 レッドジャガー 百万弗の対決」

飯塚増一「七色仮面 レッドジャガー 百万弗の対決」、

ある日、来日中のポリネシア共和国の殿下が襲われる。

その頃、警察が疑惑を持って捜査していた東西のスパイも殺される。

だが、この殺人事件はスパイ団のしわざとカモフラージュして捜査を混乱させ、その隙に財宝を奪おうとするレッドジャガー一味による犯行だった。

そして襲われた殿下も実は偽物でレッドジャガーの一味だった。




川内康範原作のテレビ「七色仮面」21話~23話を再編集した劇場版作品。

そもそもスパイ戦絡みだから、ややこしい展開なのだが、この作品では前作のややこしい展開を整理するように事態の真相が語られるので、少しだけまとまったものにはなっている。

だが例によって七色仮面は地味に暗躍するばかりで、ヒーローの活躍を前面に出した作品というよりは、悪役側の錯綜状況ばかり描いているような感じである。

だから七色仮面が主役にはあまり見えず、その正体である波島進主演にもまるで見えない。

またしてもヒーローものなのに、ヒーローという中心が希薄なままスパイ戦的錯綜ばかりやたら目立つ一篇。



2015/07/28(火) 01:10:38 東映 トラックバック:0 コメント(-)

「七色仮面 レッドジャガー 黒い手の戦慄」

飯塚増一「七色仮面 レッドジャガー 黒い手の戦慄」、

変装の名人・蘭光太郎=波島進は二挺拳銃のヒーロー七色仮面であった。

ある時晴海で男女の遺体が発見されるが、男は国家公安局員で北海道で蠢いている紙幣贋造団の調査をしていた男で、女の方は元客室乗務員で過去に麻薬の密輸をやっていた。

捜査線上には謎のスパイ団の存在が浮かび、男女の死体のそばには犯行声明の黒い手形のカードが残されていた。


川内康範原作のTVシリーズ「七色仮面」の第19話から20話を再編集した劇場版作品。

子供向けにしては、最初のスパイ戦のような追跡、殺人展開が錯綜していて、そうわかりやすい描き方をしておらず、七色仮面も脇役のヒーローのように暗躍的に戦っているので、なんか地味である。

波島進もまあ地味だがヒーロー役には合っている。

スパイ団がいて他の組織もいて、誰の犯行かわからない状況における真相究明描写が大人向けドラマよりややこしく、ガキ向けらしくないが、しかしまあ今の時代も子供向けのはずのアニメがやたらややこしい設定、展開だったりすることがあるから、こういうややこしさは意外と児童向けエンタメの昔ながらの基本なのかとも思えてくる。(苦笑)

映像的な見た目も大人っぽく、そのわりに大して面白くもないが、スパイ映画的テイストのヒーローものの一篇。


2015/07/11(土) 00:05:14 東映 トラックバック:0 コメント(-)

「相棒 ‑劇場版III‑ 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」




和泉聖治「相棒 ‑劇場版III‑ 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」再見、

特命係の杉下右京=水谷豊と甲斐享=成宮寛貴は、今は警察庁にいる元特命係の神戸尊=及川光博から、ある孤島で起きた死亡事故と島の噂に関する秘密調査を頼まれる。

その島はある実業家が個人で所有する島で、自衛隊員が共同生活で訓練をやっていた。

二人は捜査を開始するが、右京はすぐに死亡事故は殺人ではないかと疑い出し、その後島にまつわる巨大な闇が見えてくる。




「相棒 」劇場版シリーズの三作目。

「相棒」の劇場版はこれまで、他のテレビドラマシリーズの劇場版が大概どうしようもない愚作になる傾向がある中、極めて例外的にドラマのレベルを下げず、また劇場版ならではの醍醐味まで付加してきた稀有な傑作シリーズだったのだが、この三作目でついにいかにもテレビシリーズの劇場版らしいイマイチな出来なものになってしまった。

これならテレビでたまに放映される二時間、三時間の拡大版「相棒」スペシャルバージョンの方が上である。

一番の問題点は国家規模の陰謀話とショボすぎる馬小屋のトリックの話に落差がありすぎてミステリとしても「相棒」としてもアンバランスなものになってしまった点だろう。

しかしながら「相棒」はこれまで日常の小さな事件の背後に国家規模の巨大な陰謀があることをミステリ的な醍醐味としてリアルに見せることにはかなりの巧さがあったシリーズである。

だからそれほどこの劇場版が「相棒」らしからぬ設定というわけでもないのだが、やはり最初に国家防衛だの孤島における自衛隊の訓練だのその孤島の噂だの疑惑の死体だのと相当に物々しい大風呂敷を広げておいて、それが何ともショボく収まりこんでしまうという展開が難点で、それじゃあよそのこけおどし気味のミステリ映画と変わらんじゃないかということになってしまう。

別に役者陣が悪いわけでも演出が劣化したわけでもないが、言わば構成がつまらないが故にありがちなミステリ映画になってしまった点が一番の問題点だろう。

そんなちょっと残念な出来の一篇。


2015/06/30(火) 00:20:29 東映 トラックバック:0 コメント(-)
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