0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『新網走番外地 嵐を呼ぶ知床岬』




降旗康男『新網走番外地 嵐を呼ぶ知床岬』再見、

末広勝治=高倉健は服役を終え、網走刑務所を出て、結婚する妹がいる東京へ向うが、途中の駅前の食堂で牧場同士の喧嘩に巻き込まれ、一方の牧場で働くことになる。

競走馬を作っている二つの牧場は、ダービー馬をめざすライバル関係で、敵対する牧場は、先代が不正事件を起こした死後、三人兄弟の山本麟一、今井健二、谷隼人が跡を継いでいた。

だが、健さんのいる牧場にダービーの有力馬が生まれたため、三兄弟はこの馬を奪おうとする。

そして三兄弟の牧場には、渡世人の安藤昇がわらじを脱ぐが、安藤は健さんを亡き親分の仇として狙っていた。

奪われたジープを奪還しに、健さんは三兄弟の牧場に行き安藤と出くわすが、そこで妹の結婚式に出たい健さんは、タイマンを3日間延期してもらい、3日後に戻らなければダービー馬を渡せという条件を出され、健さんのいる牧場側は了承する。

だが、妹の結婚式をすませた健さんを、三兄弟の手下が襲い、傷だらけで何とか戻り、怪我が回復した頃、健さんのいる牧場の主・三橋達也が、三兄弟の手下のダンプカーに轢き殺される。






末広勝治の新網走番外地シリーズの一作。

例によって、サラリーマン喜劇時代は健さんの同僚や仲間だった山本麟一や今井健二が極悪な敵役で、健さんの弟分の谷隼人が、最初は健さんと敵対するも、徐々に改心して善玉側に寄ってくる役どころを演じている。

この映画はキャスティングが、前に書いた『新網走番外地 吹雪のはぐれ狼 』とかなり被っている。

安藤昇は健さんを狙う刺客役だが、そう悪役的ではなく、寧ろまともな任侠ヤクザとして描かれている。

この辺りのライバル刺客キャラの設定も、網走番外地シリーズの頃からのよくあるパターンである。

玉川良一が浪曲を披露すると、自分よりはるかにプロ裸足な玉川に、健さんが脱帽するシーンは、何ともドキュメンタリーっぽいシーンだったりする。

健さんのいる牧場側の人間を、元任侠ヤクザの藤田進と牧場主の三橋達也が演じているが、三橋達也はイマイチ存在感が今回は薄い。

だんだん健さんに惚れていく三橋の妻、野添ひとみが一応映画のマドンナ役だろうが、またしても大してラブシーンはない。

例によって、由利徹や南利明のコメディリリーフがお約束のように挿入されている。

ダービー馬を奪おうと無茶苦茶してくる三兄弟の、後半の悪辣のエスカレートぶりも毎度のごとくかなり酷いが、しかしそれにより、ラストに健さんが怒りの殴り込みをかける任侠映画パターンに、説得力と臨場感が増している。

典型的なこのシリーズの映画らしい内容だが、わりと安定したプログラムピクチャーにちゃんとなっている一篇。 2018/03/31(土) 05:04:21 東映 トラックバック:0 コメント(-)

『新網走番外地 吹雪のはぐれ狼』




降旗康男『新網走番外地 吹雪のはぐれ狼』再見、

九州のヤクザ末広勝治=高倉健は、組のために起こした事件で、網走刑務所に入れられる。

ある日看守の今井健二が、囚人で北海道のヤクザ幹部の山本麟一と組んで、豆の横流しをしていることを知った高倉は、彼らに反抗するが、山本は高倉を抹殺せんと裏山の作業場で殺そうとし、高倉は巡回外人牧師の岡田眞澄に救われる。

岡田はカムイベツの教会で、少年院を出た身寄りのない若者たちを引き取り、更生させようとしていたが、出所後の高倉も牧師の岡田と兄弟盃を交わし、岡田の子分と称して仕事を手伝いはじめる。

ボクシングを通して更生させようとする岡田のジムの若者は、好き勝手やってる者が多く、谷隼人もその一人だったが、谷には将来有望なボクサーの才能があり、皆に期待されていた。

しかし谷は山本麟一がやっているジムに行きたがっていたので、高倉は何度も谷を連れて帰ろうとして暴力を振るい、岡田から縁を切られそうになっていた。

だが高倉は山本の側の妨害に耐えながら攻撃するようになり、なんとか岡田と和解し、谷の信頼も得られるようになるが、自分のジムに来ようとしない谷に山本が怒り、谷の恋人を人質に八百長試合をさせようとする。




新網走番外地シリーズの一作。

健さんがクリスチャンになり、キリストの教えを守って戦うお話。

健さんが外人牧師の岡田眞澄と約束した非暴力の誓いを守って耐えに耐えて、最後にはお約束の殴り込みという展開だが、そもそも任侠ヤクザ映画自体、主人公が耐えに耐えた後、最後の殴り込みで敵を壊滅させる展開が定番なのだから、別に毎度のパターンのお話である。

しかし任侠親分を変奏させたような岡田眞澄の片言の日本語を喋る外人牧師がとてもいい味わいで、健さんが岡田を親分と慕う設定に説得力があるところがいい。

この岡田眞澄の好演は中々に出色である。

また、脇を固める由利徹や南利明のすぐにミニコントが始まるコメディリリーフぶりも相変わらずの味わいで面白く、谷隼人も役に合っているし、今井健二、山本麟一も毎度のコテコテの悪役ぶりである。

冒頭、網走刑務所で仲良くなる若山富三郎に健さんが途中助けられながらも、最後は対決するパターンだが、若山富三郎もお得意のコミカルテイストな好漢役によくハマっている。

ただ、一応健さんのマドンナ役らしい尼役のジューン・アダムスは、美人なルックスはマドンナ役として申し分ないが、出番が超少ないし、台詞もたどたどしく、まあ相手役というよりはチョロっとゲストで華を添えた程度の出演である。

定番なパターンで展開する安定したプログラムピクチャーだが、プログラムピクチャーの良さがよく出ているし、健さんばかりでなく岡田眞澄の好演が秀逸に光っている、それなりに面白く見られる一篇。 2017/11/04(土) 00:05:10 東映 トラックバック:0 コメント(-)

『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断』




橋本一『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断』、

7年前、英国の日本領事館で集団毒殺事件が発生。
一人生き残った少女は国際犯罪組織バーズに誘拐され消えてしまう。

7年後、杉下右京=水谷豊と冠城亘=反町隆史の特命係の二人は、バーズを追う鹿賀丈史と共に捜査するが、バーズの情報を掴んだ捜査官が殺される。

その頃、日本政府に対し、消えていた少女の身代金が要求されるが、日本政府はバーズをテロ組織と認定し身代金要求を拒否する。

そのためか、バーズは50万人が集まる国際スポーツ競技大会のパレードを狙うテロ計画を立てる。

パレードが行われる最中、杉下と冠城は犯人の正体を独自に推理し、追跡する。

事件は70年前のある真実に繋がるものだった。




テレビドラマ『相棒』シリーズ劇場版の第4作。

現在の4代目相棒・冠城亘=反町隆史の劇場版初出演作でもある。

個人的には『相棒』 劇場版の最高傑作だと思う。

前作の3作目がどうにもイマイチだったので、それに比べればかなりの出来栄えである。

『相棒』らしいミステリ的要素を絶妙に盛り込んだスピーディーでテンポの良い展開、

蛇行し変化していく物語と事件の真相、

そしてクライマックスのパレードにおけるサスペンスアクション展開に至るまで、一気に見せる面白さである。

その上でラストには、70年前のある事実にまつわる真相が開示されるが、ここで物語の真相的主題が本格ミステリ的推理の果てに大ドンデン返しのように発覚する。

(ここからは少しネタバレ注意)

このラストに示されている事は、かなり意味深である。

通常、愛国心と反戦思想は対立概念として語られ議論されることが多い。

しかしこの映画は、21世紀の戦争であるテロの時代において、反戦思想の教訓として、テロ対策としての愛国心が描かれるのである。

展開は『相棒 劇場版』第1作に似ているし、テレビシリーズの『相棒 』Season14 元日スペシャル「英雄」で語られた主題とも通底しているように思う。

だがこの映画は、そこからさらに発展した結末を迎えている。

これをただの刑事サスペンスアクション娯楽映画と見るだけなら、銃撃戦やアクションシーンの盛り上がりに欠けるエンタメ作品という風に見えてしまうかもしれない。

しかしこれは、やはり、れっきとした『相棒』の映画版なのである。

「かっての戦争に対する反省としての反戦思想を、21世紀の戦争であるテロを防御するための愛国心として生かす」ということを語っている者など、そんなにいるだろうか。

現在の政治討論番組を見ても、相も変わらず、保守派の戦意高揚と、21世紀の戦争を甘く見ている反戦思想のリベラル派の二元論的小競り合いが未だに反復されているのが現実ではなかろうか。

だがこの映画は違う。

反戦思想を教訓として、21世紀の戦争に愛国心を持って対峙し、その教訓を生かすという、先の二元論を超えた、反戦思想と愛国心が表裏一体であることの重要性を、本格ミステリ的謎解き展開と、伏線の回収技にて導き出し、たどり着く映画になっている。(そしてこれが、ポスターに書かれたコピー「あなたは、生きるべきです。」の真意に繋がっていく)

これまでの世界映画で、およそこんなことを語った映画は稀有ではないかと思う。

もちろんこの映画にも瑕疵はあり、真犯人は最初からなんとなく察しがつくし、救助した少女を管理する似顔絵警察官の体たらくや、パレードの警備員のだらしなさはいかにも漫画チックである。(わざとやってるのかもしれないが)

また活劇展開がちょっとあっさり気味で、物々しく登場するテロリスト側の北村一輝が後半すぐ捕まる呆気なさも気にはなる。

だが先にも述べたように、この映画は一つの意義を見出していると思う。

『相棒』TVシリーズを支えてきた太田愛の脚本は見事だと思う。

劇場版らしい、陰影に富んだ映像も悪くないし、主役の特命係の二人、水谷豊と反町隆史も実に好演している。

また出番は少ないが、かってのレギュラーで、鑑識ではなく警察学校の教官として登場の米沢=六角精児や、元相棒の神戸尊=及川光博も映画に花を添えているし、川原和久や山中崇史の刑事コンビもちゃんと大事なところで活躍、その他片桐竜次や小野了、鈴木杏樹、石坂浩二、山西諄、神保悟志、仲間由紀恵、志水正義、久保田龍吉などなどのレギュラー陣もいつも通りに好演している。

それにしても大物政治家役の江守徹は、かなり見た目が変わっていて、最初江守徹に見えなかったが。

個人的には『相棒』劇場版最高傑作と評価したい一篇。 2017/02/14(火) 00:01:54 東映 トラックバック:0 コメント(-)

「七色仮面 レッドジャガー 最後の切り札」

飯塚増一「七色仮面 レッドジャガー 最後の切り札」、

ブラックハンド一派は世界のダイアモンドの多くを奪取しており、日本のダイアも狙っていた。

だが警視庁捜査一課は、ついに波島進=七色仮面の協力を得て、ブラックハンドのアジトを包囲する。

そこへ香港からブラックハンドの総帥がやってきて、内部抗争が巻き起こる。



川内康範原作のTV「七色仮面」24話から25話を再編集した劇場版作品。

散々ややこしいスパイ戦じみた錯綜展開だったお話も最終話的なこの作品でなんとか決着がつくが、それでもヒーロー七色仮面を脇で地味に活躍させながら、最後までややこし展開は顕在で、決着は一応つくものの、内部抗争も結末も最後までまたまた蛇行した展開である。

だが敵の黒幕が誰かだいたい察しはついていたものの、こういうガキ向けのヒーローものでこの黒幕の正体というのは中々頑張っている方とは言える。

七色仮面が事件を解決してはいるが、結局最後まで地味で、悪の組織の描写メインに見えるところが個性と言えば個性だろう。

そういう意味では、それなりに見ていられる一篇。


2015/08/01(土) 03:47:38 東映 トラックバック:0 コメント(-)

「七色仮面 レッドジャガー 百万弗の対決」

飯塚増一「七色仮面 レッドジャガー 百万弗の対決」、

ある日、来日中のポリネシア共和国の殿下が襲われる。

その頃、警察が疑惑を持って捜査していた東西のスパイも殺される。

だが、この殺人事件はスパイ団のしわざとカモフラージュして捜査を混乱させ、その隙に財宝を奪おうとするレッドジャガー一味による犯行だった。

そして襲われた殿下も実は偽物でレッドジャガーの一味だった。




川内康範原作のテレビ「七色仮面」21話~23話を再編集した劇場版作品。

そもそもスパイ戦絡みだから、ややこしい展開なのだが、この作品では前作のややこしい展開を整理するように事態の真相が語られるので、少しだけまとまったものにはなっている。

だが例によって七色仮面は地味に暗躍するばかりで、ヒーローの活躍を前面に出した作品というよりは、悪役側の錯綜状況ばかり描いているような感じである。

だから七色仮面が主役にはあまり見えず、その正体である波島進主演にもまるで見えない。

またしてもヒーローものなのに、ヒーローという中心が希薄なままスパイ戦的錯綜ばかりやたら目立つ一篇。



2015/07/28(火) 01:10:38 東映 トラックバック:0 コメント(-)
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