0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「娘の季節」

樋口弘美「娘の季節」、

和泉雅子はバスガールとして仕事をしていたが、同じバスの運転手である杉良太郎に気があった。

しかし杉は前に自分のバスのバスガールをやっていた時に怪我をして片手が使えなくなってしまった芦川いづみに気持ちがあるようで、和泉はそのことが気掛かりだった。

和泉の兄・川地民夫は働いていた工場が潰れいつも金に困っていたがそのことも和泉には気掛かりだった。



後ににっかつロマンポルノのプロデューサーになり、TVで特撮ものなどを監督した樋口弘美による、日活青春もの系の働くバスガールを描いた作品。

和泉の恋敵である芦川いづみの硬質なキャラが中々よく、個性的に好演している。

コミカルに描かれているわりには不幸なことがよく起こり、川地の顛末なども悲惨なものだが、それとは対照的に和泉雅子は前向きかつ元気に生きており、和泉ー杉ー芦川の三角関係もそうドロドロはせずわりと爽やかな結末となる。

働く女性を描いた成瀬巳喜男映画のような内容ではあるが、あっさり描きすぎているというか、妙にメリハリがないからかイマイチパっとしない映画である。

役者陣は悪くないし、そうつまらなくもないが、妙にこじんまりまとまってしまっている一篇。


2015/06/16(火) 01:07:11 日活 トラックバック:0 コメント(-)

「女地獄 森は濡れた」

 
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 神代辰巳「女地獄 森は濡れた」再見、

 大正時代に米騒動が起こっていた頃、伊佐山ひろ子は、彼女の主人が米騒動に巻き込まれて殺され、逃げていた。

 その伊佐山を尾行する車があり、中にはホテルの女主人・中川梨絵が乗っていた。

 中川は伊佐山をホテルに招くが、実は森の奥深くにあるそのホテルは、セックスと暴力で人間を飼育する館だった。

 ホテルの男主人・山谷初男は伊佐山を調教し出す。



 

 日活ロマンポルノの、マルキ・ド・サド原作を映画化したホラー的な作品。

 当時警察に猥褻映画として挙げられ、その後映倫の再審査もされなかったので劇場公開はもう無理・・・と昔は言われた作品である。

 若松孝二映画で倒錯設定が似合っていた山谷もいい味わいだが、中川梨絵が実に怪しい美しさを見せ怪演している。

 設定は今となってはこの手のエロ系は量産されているので目新しくないが、原作を大正時代に置き換えたことが功を奏して、大正デカダンスと日活インモラルとサド的世界の絶妙な融合ワールドが独特の気配を醸しだし、それを神代映画的魅惑で覆っているので映画自体が独特の世界になっている。

 快楽が全てという悪徳の側と、それに対抗する伊佐山のモラルの対峙が描かれるが、映画自体は快楽至上世界の異様さを十分に体現しているので臨場感が出ている。

 森の中のホテルという描写にも奇妙な味わいがよく出ていてカルト的魅惑に溢れている秀作な一篇。


2013/07/09(火) 13:57:04 日活 トラックバック:0 コメント(-)

「月曜日のユカ」

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加賀まりこ、加藤武 他

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 中平康「月曜日のユカ」再見、

加賀まりこは外人クラブ界隈では誰とでも寝る女として有名で、いつも世界中の男をみんな幸せにしたいと言っていた。

パパ=加藤武と恋人の中尾彬がいる加賀だが、ある時パパを尾行するとパパは実の娘にお人形を買ってやり喜んでいる姿を見る。

その後中尾と関係したり他の男と寝たりする加賀だが、自分もパパにお人形を買ってもらって喜んでもらうとか言い出す。






中平康のシュールタッチがお洒落と言われ、ファッション界で人気の映画。

ファッション界で人気なのは加賀まりこの存在感がいかにもその手には受けそうな感じだからでもあり、まあ和製ブリジット・バルドー的なコケテッシュさとして受け入れられているのだろう。

それと岡崎京子の世界と重なるセンスも映画にはあり、岡崎全盛期にこの映画も少し一部で再ブレイクしていた。

しかし中平康がかなりシュールなタッチで描くから様になってるだけで、こんな加賀まりこみたいな女が現実いたら、こりゃ逝ってる女だなとまず思うだろうな。(苦笑)

世界中の男を幸せにしたいと言いつつ、やってることは献身的というよりは自分の勝手でヘンテコな欲望しか見てない感じだし、幸せにするどころかまるでファムファタールのように加賀に深く関わった男は結局みんな死んでしまう。

加藤武のパパへの入れあげようはまるでファザコン女の典型のようだし、そのファザコンの心の隙間を埋めるために周りの男は存在してるだけなのに、男をみんな喜ばせたいとか言ってて結局不幸にしているのである。

確かに加賀も加藤の商取引のために他の男と寝ることにもなるが、どうもこの加賀は自分の心の穴にしか目が行っていないような感じがする。

そ んな女を主役にした映画がオシャレ映画と持て囃され、こんな異様な加賀に憧れてる奴が結構いるのだが、ほとんど狂人と紙一重のところにいる女に何を憧れてんだよとは正直思う。(苦笑)

この日本のファッショナブル映画の内実は実際にはそんな感じじゃないかと思うのだが、やはり加賀まりこと中平康のベストマッチが映画を魅惑的なものにしているということだろう。

ピチカート・ファイヴの小西康陽がこの映画が好きなのはよくわかるし、ピチカート的世界とも重なる映画だろう。

まあ中平らしい異色作にはなっているのだが、それにしても確かに独特の哀感のある女として描いてはいるけれども、随分歪な、結局自分の心の穴しか見てないような相当逝ってる不思議ちゃん系女を描いた映画だなとはやはり思う一篇。

2013/07/05(金) 13:43:43 日活 トラックバック:0 コメント(-)

「海底から来た女」

 蔵原惟繕 「海底から来た女」再見、

 青年はヨットに乗った後崖の上でハーモニカを吹いていた。

 それを聞いた小説家は、一緒にヨットに乗っていた美しい少女のことを聞いた。

 青年は少女と一緒に乗っていたおぼえがないので頭がおかしいのかと思う。

 しかし夜、嵐で海が荒れたが、青年がヨットに行くと少女が全裸で魚をかじっていた。

 少女は海に飛びこんだ。

 その後村の他の青年が鱶に食い殺される。

 その家は三代息子が謎の病気になっていて、いつもそこに謎の女が現われていた。




 

 後に「ピラニア」を制作した筑波久子が鱶の化身を演じたホラーじみた恋愛映画。

 筑波は中々扇情的な風情を見せ、川地民夫と奇妙な純愛関係のような感じになるが、川地の純情っぽさが中々悪くない。

 蔵原映画としてはそうフレキシブルな出来とは言えないが、まあこの手の村の怪談ものとしては、そうそうもたついた映画でもない。

 しかし怪談映画というよりは純愛映画、恋愛映画的な相貌の方が強く感じられ、筑波もその意味ではただの扇情的な女を演じているだけでもない。

 しかし日活で若い頃、鱶の化身を演じた筑波が後にアメリカでピラニア映画を作るとはなんとも鱶だのピラニアだの凶暴な魚に縁のある人なのだなと思う。(苦笑)

 ちょっとしたファンタジックな味わいを残す怪談的な一篇。



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  2013/07/01(月) 14:05:18 日活 トラックバック:0 コメント(-)

「紅の流れ星」

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渡哲也、浅丘ルリ子 他

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  舛田利雄「紅の流れ星」再見、

渡哲也はヤクザの組長を殺して逃亡し、神戸の組の用心棒をやって楽しく生きていたが、渡を疑う刑事や殺した組長の子分からの報復を警戒していた。

ある時宝石商の彼女だという浅丘ルリ子が渡を訪ねてきて、渡は一緒に宝石商を捜すが、徐々に浅丘に恋愛感情を持つようになる。




日活アクションの軽妙な一作。

何といってもこの映画はゴダールの「勝手にしやがれ」の随分影響大な映画だと思う。

渡の調子のいい飄々としたキャラはジャン・ポール・ベルモンド風だし浅丘ルリ子もジーン・セバーグ的な謎めいている上にちょっと変わった感じのクールビューティー役で、その軽妙なタッチや終わり方からして、まさに「勝手にしやがれ」を日活プログラムピクチャーでやってしまった感満々である。

しかしゴダールはだいたい元々ハリウッド50年代のB級犯罪映画とロベルト・ロッセリーニ映画をベースに「勝手にしやがれ」を撮ったのだから、こちらは言わばB級犯罪映画側からの返歌のような「勝手にしやがれ」リスペクト作とも言える。

だがこの映画が「勝手にしやがれ」のパクリという次元で終わっていないのは、やはりやたらとベラベラ喋り軽妙な渡哲也とツンデレチックな浅丘ルリ子のスカした感じの歩きながらの会話シーンの絶妙さ故であり、そのダイアログのテンポとリズム感と息の合ったやりとりの素晴らしさは本家「勝手にしやがれ」以上である。

だいたいこんな渡哲也の演技も珍しいしそのハマりぶりも半端ない上、浅丘ルリ子も超オハコなツンデレ・クールビューティー演技を披露している感じである。

日活アクションには確かに軽妙なアクション喜劇は一杯あるが、ここまでセンス溢れる小気味いい男女のダイアログの掛け合いの魅力とリズム感が描かれた映画も稀なだけに、未だ古びず面白く見られる一篇。
2013/06/29(土) 13:38:31 日活 トラックバック:0 コメント(-)
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