0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

「ハワイ珍道中」

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(2012/03/01)
花菱アチャコ、伴淳三郎 他

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  斎藤寅次郎「ハワイ珍道中」、

 ある時新聞に人探しの広告が載り、指定された女性が会いに行くと、そこにはかって女性と交際のあったハワイのパイナップル工場の社長になったと言う花菱アチャコがいた。

 その後その花菱を探して江利チエミの娘がハワイに行き、父を探すが実は花菱は社長などではなく工場の門衛であり、その姿で江利と会うことになる。

 その頃田端義夫はかっての海賊の宝の地図をみつけたと言い伴淳三郎に船を貸してくれと言ってくる。

 お宝を目指してある島に乗り込むが、そこは人喰い島で島の原住民に襲われることになる。




 

 新東宝の総天然色カラーで描かれた喜劇映画。

 ほとんどドタバタ喜劇に近く、その合間にハワイの長閑な風景や歌や踊りが出てくるが、まあコント仕立て風のシーンが多く、益田喜頓や伴淳三郎、堺駿二や花菱アチャコがドタバタを演じる様がメインという感じの喜劇映画である。

 お話の筋はシンプルなもので、途中江利チエミや田端義夫が歌うシーンも挿入されるが、全体的に歌謡映画とハワイアン喜劇映画の合体といった感じである。

 大して面白いわけでもないが、そうつまらなくもない出来で、とは言え総天然色カラーの色彩があんまり新東宝ぽくなくて寧ろ東映喜劇映画を思わせるものだったりする。

 なんというか賑やかし映画という感じが強い軽い喜劇の一篇。
2013/04/23(火) 14:17:38 新東宝 トラックバック:0 コメント(-)

「スター毒殺事件」

 
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(2002/09/01)
天知茂、 他

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赤坂長義「スター毒殺事件」何度目かの再見、

 天知茂は映画スターだったが婚約真近の恋人・万里昌代をスターにしようとして撮影所に紹介するが、人気スターの江見俊太郎が万里を見初め、そのうち万里も満更でもなくなり、二人はコンビを組んで人気を伸ばす。

 天知は江見への嫉妬をつのらせるが、万里は明らかに江見に心変わりしていた。

 天知は三原葉子に言い寄られて万里に当て付けるように逃避行するが、江見と万里がベッドを共にする姿を目撃して狂い出してしまう。



 

万里昌代をファムファタールにしたノワール犯罪映画。

 とは言え、万里のような美人を、周りに「早く嫁さんにすればいいのに」と言われてるのに女優にしようとした天知にどう見ても間違いがあり、案の定人気スターの江見に素人同然の万里を天知は奪われ、人生をそのまま狂わせる展開である。

 お話しや設定はシンプルなもので、結局スター毒殺事件に至り、天知が万里昌代というファムファタールのために破滅していく展開だが、しかし三原葉子に言い寄られても、それを袖にして万里に執着する天知という設定には説得力があり、万里昌代がそんなファムファタール役にはあまりにもピッタリなので、映画自体は新東宝ノワール的に納得出来るものになっている。

 万里の妖艶なダンスシーンや露出の多いシーン、ラブシーンや絡みのシーンなどもわりと多くあり、万里昌代の妖しい超美貌が煌めく映画としても説得力のあるものになっている。

 天知茂も万里のために狂っていく男の役には合っていて、内容的にはシンプルだがファムファタールを描いた新東宝ノワール映画としては十分に魅力ある一篇。
2013/04/09(火) 14:41:12 新東宝 トラックバック:0 コメント(-)

「人形左七捕物帖 妖艶六死美人」

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(2005/10/21)
若山富三郎、安部寿美子 他

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 中川信夫「人形左七捕物帖 妖艶六死美人」再見、

 ある日名高い絵師が描いた美人画の屏風が公開されるが、絵のモデルとなった女たちはこんなブサイクに描きやがって・・・と絵を滅茶苦茶にしたためか、恥をかいた絵師は狂ったように死んでしまう。

 しかしその1年後、そのモデルとなった女たちは六歌仙の美人として背中に美人画の彫り物まで入れていたが、一人一人予告されて殺されていく。

 岡っ引きの左七=若山富三郎は捜査に乗り出し、次々と容疑者や怪しい人物が浮かぶが、どれも犯人ではなかったり、殺されたりしてしまう。

 そうこうするうち、左七は謎の集団に襲われ、天知茂の浪人に助けられるも、妻の日比野恵子が誘拐されてしまい、家に残された書き置きには、事件から手を引けと書かれていた。



 

 横溝正史原作の「人形左七」シリーズの一作。

 最初から話がスタスタと展開し、派手な女たちの暴れっぷりから連続殺人事件まで一気に見せる展開である。

 他のシリーズ作ではスリ役もやっていた日比野恵子はここでは左七の女房役を演じている。

 それにしても、冒頭どう見ても実物より美人に描かれた屏風の美人画を、モデルになった女たちが、こんなブスに描きやがって、と絵を切り裂いたり落書きしたりするのだが、一回てめーの顔をよく鏡で見てからモノを言えとしか言いようがない挿話である。(苦笑)

 だがこれにはちゃんと訳があり、その陰謀のからくりは最後に解かれる。

 終盤の解決編で真犯人が左七によって暴かれると、その犯人が急に逆ギレして正体をまるで怪物のように露わにし、大見得まで切るところはさすがに笑わせる。

 若山の左七は役にはバッチリ合っているのだが、台詞回しがいかにも江戸の岡っ引き風すぎてちょっとわざとらしい可笑しさも感じる。(苦笑)

 今作もただの怨恨による女の連続殺人事件と思われていたものが、もっと大きな隠蔽工作のためのものだったことが最後に発覚し、お約束的なチャンバラ展開で終わっていくが、このラストの大立ち回りはいかにも若山富三郎=左七の独壇場という感じで派手に描かれている。
 
 女性の露出度が当時としては多めなところも新東宝らしく(三原葉子も出演している)、まあそれがこのシリーズの一つの特徴ともなっている。

 スタスタ展開するタッチ故に、わりと飽きさせない一篇。


2013/02/19(火) 13:49:31 新東宝 トラックバック:0 コメント(-)

「人形左七捕物帖 浮世風呂の死美人」

 毛利正樹「人形左七捕物帖 浮世風呂の死美人」再見、

 ある時一年前に失踪した女形役者のレアな浮世絵を持っている女が次々と殺される事件が起こる。

 十手持ちの左七=若山富三郎は捜査に当たるが、その浮世絵はある男が昨年大量に買い込んだのだが、その前に早々と買っていたファンの女子がいて、殺されているのはその女子たちだった。

 犯行現場では顔に派手な痣がある男が目撃されていた。

 だがその事件には、裏にもっと大きな陰謀につながるものが隠されていた。



 

 横溝正史原作の推理もの時代劇映画。

 ミステリ的な意味では、顔に痣がある男や失踪した役者の正体などに中々ミステリ的な魅力があり、殺人事件の裏に隠された陰謀話に最終的に繋がっていく描写もわりとスムーズですっきりしている。

 しかし事件は、今でいえばBL系のファンの腐女子がレアすぎるグッズを持っていたために殺されるというような事件であり、なんとも奇妙に今風なものだったりする。(苦笑)

 若き若山富三郎の左七親分はさすがにハマり役で、天城竜太郎(若杉光夫)も、後には変態役を得意とするようになるが、この頃は二枚目らしい役どころを好演している。

 日比野恵子の元スリがどう見ても足を洗っていないどころか、いつでも怪しい場所に姿を現して現役バリバリ感丸出しなのに、日比野に「私はとっくに足を洗ったんですよ」と言われると、過去に何度も捕まえたことがあるくせに若山はイチイチ「おっと、こいつはすまねえ」と言うのが可笑しい。

 まあ若山としては疑ってないふりして隙を突こうと思っていたのかもしれんが、そのわりには日比野を自由にしすぎているところがある。(苦笑)

左七=若山は銭形平次のように銭を投げる武器もろくにないので、男気はあるが大して強くもないのだが、子分たちからは強い、強いと言われている。

 しかしそれは子分が弱すぎるからだろ、というのは見てれば誰でもわかるだろう。(苦笑)

 最後は大きな話に展開していきチャンバラ展開になるわりには、ミステリ映画としてちゃんとお話が進展していく、そう悪くない一篇。


 
人形佐七捕物帳 (光文社時代小説文庫)人形佐七捕物帳 (光文社時代小説文庫)
(2003/01)
横溝 正史

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2013/02/18(月) 13:51:32 新東宝 トラックバック:0 コメント(-)

「東京のえくぼ」

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(2005/09/22)
上原謙、丹阿弥谷津子 他

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 松林宗恵「東京のえくぼ」、

 上原謙はバスに乗っていて 丹阿弥谷津子の足を踏むが、その後彼女の財布がスられたことがわかり、警官の小林桂樹らに乗客は皆身体検査を受けるが、スリが上原のポケットに財布を隠したため、上原にスリの容疑がかけられる。

 その頃紀伊国屋物産では社長が失踪してしまったために困っていたが、その社長こそ上原であった。

 上原は書類にメクラ判ばかり押させられ、冠婚葬祭やパーテイに出席しては人の書いた原稿を読むだけの仕事にうんざりして失踪したのだが、その後会社に戻るも、また丹阿弥谷津子の助けを借りて雲隠れし、彼女の家に正体を隠して住むようになる。

 そこでは上原の会社の小会社の缶詰め工場で働いている柳家金語桜がいてよくしてくれた。



 

 社長が失踪して恋愛するラブコメ的な喜劇映画で、松林宗恵のデビュー作。

 意外と悪役っぽい存在は出てこず、金に汚そうな古川六波の会社幹部も結局そう悪い人ではなく、失踪中に社会に出て上原が苦労するという展開でも別になく、終始楽しい描写が続く映画である。

 上原はメクラ判ばかり押して冠婚葬祭などの行事で人の原稿を読むだけなのがつまらないから失踪するが、しかしそれならメクラ判など押さずに毎回よく吟味して判子を押せばいいし、人の原稿ではなく、心を込めた祝辞やお悔やみの言葉の原稿を自ら書いて読み上げればいいじゃないかと思うが、そういう発想はこの上原にはまるでない。

最終的には、上原の正体を知らない金語桜に、会社の社員を信用してないから社長も信用に足る人物にならないのだと上原が暗に言われて、自分が判子を押す決済をしないために関連会社が迷惑していることに気がついて会社に帰るのだが、しかし多少の猜疑心も持たないお家柄社長のことをバカ社長とか世間知らずのボンボン社長と呼ぶのだから、この解決にそう納得のいくものがあるようにも見えない。

 社長には社長の仕事がちゃんとあるし、一見無意味に思えても組織社会の長がしっかりしなかったらどうにもならん、ということは金語桜と一緒に自分の会社の子会社の工場で働いて上原は少しわかったろうが、それでもどうも明確な感じはしない。

 丹阿弥谷津子が下町の娘にしては品が良すぎるようにも見えるが、この方は老いてお婆さんの役をやるようになってもその品格を保ったままである。

 喜劇映画としてはわりと面白く出来ていて、松林宗恵がデビュー作からしてキチンとした喜劇を撮っているなとは思わす一篇。



2013/02/17(日) 13:40:17 新東宝 トラックバック:0 コメント(-)
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