0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 月丘夢路 坂野義光




月丘夢路さんが亡くなられた。

先に亡くなられている井上梅次監督の奥さんだったが、その出会いの映画であった、井上監督の、前にここで評を書いた『火の鳥』は、月丘夢路さんの最高傑作だと思う。

波瀾万丈の人生を乗り越えて生きていく女優役を実に堂々と演じられていて素晴らしかった。

他に東宝の『ゴジラ』より先に同じテーマ曲が使われた、これも前に評を書いた、シニカルな松竹映画『社長と女店員 』や、こちらも評を書いている、川島雄三の『あした来る人』の、オタクな男ばかり好きになってしまう女の役や、『白夜の妖女』や『夜の牙』などでの、やたら色気が出ていて煽情的な役どころも良かった。

その他『美徳のよろめき』や『晩春』、『告白的女優論』や『銀座二十四帖』、TV『犬神家の一族』他などなどでも好演されていた。

月丘夢路さん、ご冥福をお祈り致します。



また、『ゴジラ対ヘドラ』の坂野義光監督も亡くなられた。

最近、福島の原発事故に材を取った『シン・ヘドラ』を構想されているという話も出ていたので、それからすぐに亡くなられてしまったのがとても残念である。

こちらは『ゴジラ』シリーズ中、最も好きな作品が『ゴジラ対ヘドラ』で、子供の頃、封切りで観に行って、最もインパクトを受けた怪獣映画がこの作品なので、協力監督や部分的な監督、またはTVでの監督作以外の、正式な映画監督作がこれ1本ではあっても(ゴジラを作中で飛ばしたことで田中友幸プロデューサーの不評を買い、その後監督作が撮れなかったらしい)やはり巨匠だと思っている。

水中撮影の技術を確立され、それを活かした仕事もされていたが、やはり「ヘドラを作った人」というだけでも、歴史に残るべく映画監督だと思う。

坂野義光監督、ご冥福をお祈り致します。



2017/05/13(土) 01:35:12 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 ジョナサン・デミ



ジョナサン・デミ監督が亡くなった。

世間的にはやはり『羊たちの沈黙』の監督ということになるだろうし、実際出世作だと思うが、初期のロジャー・コーマンのニューワールド・ピクチャーズ作品も中々良かった。

特にカーアクションシーンが良かった『クレイジー・ママ』や、ピーター・フォンダ主演の実に70年代B級アクション映画らしい佳作『怒りの山河』などはとても好きな作品である。

またトーキングヘッズのライブドキュメンタリー『ストップ・メイキング・センス』もひたすら飽きさせない面白さで、デヴィッド・バーンを魅力的に捉え、かなり良かったが、この手の音楽系の作品には『Neil Young Trunk Show』や『ニール・ヤング/ジャーニーズ』などもある。

思えば『サムシング・ワイルド』のコメディタッチには、かってのスクリューボールコメディの80年代版的趣きも少しあったが、音楽をジョン・ケールとローリー・アンダーソンが担当し、主題歌がデヴィッド・バーンで、ザ・フィリーズが素人バンドとして出てきて演奏してたりと、こちらにもニューヨーク・ニューウェイブ系音楽映画的要素があった。

しかし『羊たちの沈黙』のインパクトが世間的に大きかったからか、その後監督作は多いが、『羊たちの沈黙』の監督というハードルの高さが災いしてなのかどうか知らぬが、劇場未公開のビデオストレート作品が多くなった。

それでもヒューマンドラマ『フィラデルフィア』も、『影なき狙撃者』のリメイク『クライシス・オブ・アメリカ』なども悪くなかった。

その他『レイチェルの結婚』や、TVでルイ・ジュールダンが犯人役の『刑事コロンボ/美食の報酬』なども撮っていた。

やはりデミ監督は基本うまい監督だったのだと思う。

ジョナサン・デミ監督、ご冥福をお祈り致します。







2017/04/29(土) 00:05:49 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 渡瀬恒彦




渡瀬恒彦氏が亡くなった。

お身体が悪い話は聞いていたものの、4月から始まる『警視庁捜査一課9係』の新シーズンにまた主演されるとのことだったので、あまりに急な訃報がとても残念である。

生涯、現役役者を貫徹された方だった。

石井輝男監督作で、東映でのデビュー作『殺し屋人別帳』の時はクールな若者という感じだったが、『唐獅子警察』や『実録 私設銀座警察』、『仁義なき戦い』シリーズや『沖縄やくざ戦争』、ATG映画『鉄砲玉の美学』他などなどの頃になると、芸能界ケンカ最強伝説を彷彿とさせる(子供の頃からガチで強かったらしい)、ギラついたマッドドッグぶりを全開させ、このギラついた狂犬のような渡瀬氏が個人的には一番好きである。

そして東映カーアクションの二大金字塔である『暴走パニック 大激突』と『狂った野獣』に主演し、東映カーアクション最強の俳優だと思ったものだった。

この二作には、日本のアクション映画の可能性が充満していたので、当時から随分思い入れがあり、渡瀬氏もハリウッド映画に負けないカーアクション映画にしようと、『狂った野獣』では渡瀬氏自らバスのカースタントに挑んでおり、それ故に相当に熱気ある傑作になった。

その他、『銀蝶渡り鳥』に続いて梶芽衣子と共演した秀作『ジーンズブルース 明日なき無頼派』や、バイクアクション映画『狂走セックス族』、東映ピンキーバイオレンスの『恐怖女子高校 暴行リンチ教室』や『女番長 感化院脱走』『女番長 タイマン勝負』『女囚やくざ』などにも出演し、存在感を見せた。

空手映画『極悪拳法』や『女必殺五段拳』他では、ケンカ最強にして空手有段者の渡瀬氏の凄みが出ていた。

また90年代に入って、東映B級ハードボイルド探偵映画の秀作『鉄と鉛 STEEL&LEAD』に主演され、もうかなりの大物名俳優となっていたのに、まるで若い頃、ギラギラしながらよく出ていた東映B級アクション映画に帰還されたような好演を見せ、映画も面白かったが、なんだか嬉しかった覚えがある。

TVドラマでも、主演作『大激闘マッドポリス'80』はとても好きだったが、これにはピラニア軍団の若き片桐竜次氏や志賀勝氏がレギュラーの刑事役に大抜擢されているのも嬉しかった。

渡瀬氏はピラニア軍団の助っ人に名を連ねていたし、東映でガッチリ組んできただけに、そのままTVの刑事ドラマで堂々レギュラー同士でコラボしていることが素晴らしかった。

ピラニア軍団の人たちとは、それから何年か経っての『おみやさん』でも、片桐氏他、野口貴史氏や『狂走セックス族』に主演し、渡瀬氏と共演した白井磁郎氏などが出演し、共演していた。

その他、後のTVドラマ主演作での活躍に通じるような、ヒューマンで人情味ある役どころを、松竹の『神様のくれた赤ん坊』や『震える舌』『時代屋の女房』他などで見せていた。

また『セーラー服と機関銃』『化石の荒野』『戦国自衛隊』他の角川映画でも好演していた。

近年はよく、TVドラマでの主演を精力的にこなされていたが、そこでも西村京太郎原作映像化ドラマでの、十津川警部役は見事なハマり役だったし、『おみやさん』や『世直し公務員 ザ・公証人』シリーズ他なども好きだった。

兄の渡哲也氏とのドラマ共演作も、お互いの個性がよく出ていて良かった。

4月からの『9係』新シーズンには、渡瀬氏自身思い入れがあったようで、復帰を熱望されていただけに、お早く亡くなられてしまったのは実に惜しい。

しかし、生涯現役役者として俳優を全うされた、素晴らしき名優だった。

渡瀬恒彦さん、ご冥福をお祈り致します。







2017/03/18(土) 00:07:15 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 鈴木清順



鈴木清順監督が亡くなった。

日本映画史上、おそらく最高に独創的な才人だったと思う。

93歳と長生きされたが、監督、脚本家だけでなく、俳優や随筆家、作家としても活躍された。

監督作としては、実は鈴木清太郎時代から、その個性と才気は発揮されていたと思う。

清順さん独特センスのアイデアとコメディテイストが楽しい『海の純情』、
赤木圭一郎が好演の『素っ裸の年齢』、
元々ミュージカル仕立てだったが、会社に怒られて作り直し、それでも独特な作風となった『8時間の恐怖』、
プロットが面白い上に、白木マリがいい味の『暗黒街の美女』、
奇妙な恋愛映画『らぶれたあ』、
ヌーベルヴァーグ的な疾走感の『すべてが狂ってる』、
俺=和田浩治の周りの人間の話に焦点が移行していく異色作『俺に賭けた奴ら』、
奇妙な銃撃戦のセンスが清順さんらしい『散弾銃の男』、
渡辺美佐子が怪演した、夜中に走行する機関車や、火だるまが不気味すぎる『13号待避線より その護送車を追え』、
実は大人の女の恋愛映画『踏みはずした春』、
中原早苗が怪演の『密航0ライン』に、
露骨に清順節が炸裂する『探偵事務所23 くたばれ悪党ども』や『野獣の青春』、
伊藤弘子に清順的な味がある『関東無宿』、
まるで車が浸水していくかのような雨のシーンが奇妙な『俺たちの血が許さない』 、
格闘シーンのスタイリッシュなアイデア がいい『刺青一代』、
野川由美子主演の女の物語がシュールな仕掛けの数々で異形の映画になっていく『河内カルメン』、
随所に清順的アイデアが強烈に配備された『東京流れ者』、
奇妙なカット割りや演出、シュールなアイデアがごった煮なのに、ちゃんと快活な青春映画の快作にもなっている『けんかえれじい』や『悪太郎』シリーズ、
そして日活解雇とその後の鈴木清順問題共闘会議を引き起こした、具流八郎グループによる、センセーショナルなまでに清順節の頂点を極めたと言える『殺しの烙印』、
その後映画が撮れない時代が長かったのに、久々に撮った梶原一騎原作の映画化が容赦なく清順節全開の出来だった異様な怪作『悲愁物語』、
そして日本映画界や世間に、鈴木清順美学とその独自の映画世界の凄さと、映画としての凄みを徹底的に見せつけた『ツィゴイネルワイゼン』、
プログラムピクチャーと清順節が絶妙にクロスした痛快作『カポネ大いに泣く』、
これも久々に撮ったのに、全くやりたい放題の清順節が嬉しかった『ピストルオペラ』、
などなどが特に好きな作品だった。

他に、遺作となった『オペレッタ狸御殿』に至るまで、清順美学溢れる『陽炎座』『夢二』などの浪漫三部作の二作、日活時代の『暗黒の旅券』『肉体の門』『春婦傳』や、清順的アイデアが随所に明滅する和田浩治主演作ほか、ビデオ作品の『春桜 ジャパネスク』『弘高青春物語』などなどを撮られていた。

またテレビ監督作では、『恐怖劇場 アンバランス 木乃伊の恋』や、清順節をTVで全開させた『穴の牙』、『陳舜臣の神獣の爪』、桜がやたら舞ったりちょっとしたアイデアが少し清順的だった、大江戸捜査網の一話「花吹雪炎に舞う一番纏」、火サスドラマとしてはかなり異色の怪作に仕上がった『家族の選択』他などなど、どれも面白かった。

俳優としても存在感ある演技を見せていたし、随筆も捻りがあって秀逸だった。

またCM演出作にも清順的な間合いが感じられた。

個人的には、最も敬愛する映画監督だった。

鈴木清順さん、ご冥福をお祈り致します。

2017/02/25(土) 02:23:01 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 松方弘樹





松方弘樹氏が亡くなった。

病気の話は最近よく報じられていたが、そこからお早く亡くなられてしまった。

若い頃は、前にここで評を書いたデビュー作「十七才の逆襲 暴力をぶっ潰せ」や、「893愚連隊」、または「怪竜大決戦」「用心棒市場」他などの東映時代劇で二枚目俳優として好演していた。

大映(出向)時代は「刑務所破り」「皆殺しのスキャット」「兇状流れドス」「眠狂四郎」シリーズ他などで、ちょっと影のあるタイトな芝居を見せていたが、東映で「夜の歌謡シリーズ 長崎ブルース」「昭和おんな博徒」「不良街」などに出ながら、70年代の実録ヤクザ映画路線で一気にその個性と存在感が大きく花開いた。

「仁義なき戦い」シリーズは勿論のこと、「やくざ対Gメン 囮」での生々しい演技、「北陸代理戦争」「強盗放火殺人囚」「脱獄広島殺人囚」「暴動島根刑務所」「県警対組織暴力」「実録外伝 大阪電撃作戦」「沖縄やくざ戦争」「沖縄10年戦争」「広島仁義 人質奪回作戦」「暴力金脈」他などでのワイルドギッシュでギラついたチンピラやヤクザ、犯罪者役などにはエネルギーに溢れた生々しくも強烈な存在感があり、やはりこの時期の東映ヤクザにおける松方氏の精力的な名演が自分には役者としての頂点ではないかと思える。

また「柳生一族の陰謀」「江戸城大乱」他の東映時代劇でも好演していた。

しかしその後東映ヤクザ映画が下火になり、TVのバラエティー番組で映画での個性とは随分違う明るく楽しいキャラでの出演などが目立つようになるが、Vシネマには亡くなるまでずっとかなりの数の作品に主演していた。

昨年の「列島分裂-東西10年戦争」でも渋い老いたヤクザ役を貫禄で演じていたが、結局晩年に至るまで生涯現役の役者として活躍された。

Vシネ系では、ここで評を前に書いたクライムアクション映画の秀作「ギャングコネクション」ややたらにバイオレンスでガチンコが強い初老ヤクザ役の「暗黒街の帝王 カポネと呼ばれた男」、アウトロー刑事役の「桜の代紋 血の報酬」、うらぶれた探偵役の「ドッグファイター ごろつき刑事」、堂々たるヤクザ役の「獅子の血脈」、これも前に評を書いた、「レオン」を意識した、謂わば老ヒットマンと少女の恋を描いたロリコン殺し屋映画「哀愁のヒットマン」他などなどでの好演が特に印象深い。

「OKITE やくざの詩」「松方弘樹の名奉行金さん2009」は監督作である。

主役や善玉役ばかりでなく、「修羅のみち」では金子信雄ばりに卑劣で情けない悪役の組長役を派手に怪演していた。

またホラー映画「最後の晩餐」でのかなり怪しい感じの刑事役なども、他の作品では見られないちょっと異色な存在感を脇役として醸し出していた。

三池崇史版「十三人の刺客」では十三人の要となる武士を貫禄で演じ、映画自体をきっちり引き締めていた。

その他、刑事コロンボ的倒叙ミステリTVドラマ「チェックメイト78」の佐賀四郎警部役もとても良かった。

日本映画を代表するスター俳優であり、晩年に至るまで精力的に生涯現役役者として主役を張り続けた、実に素晴らしき名優だった。

松方弘樹さん、ご冥福をお祈り致します。







2017/01/24(火) 02:42:24 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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