0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 ハリー・ディーン・スタントン




ハリー・ディーン・スタントンさんが亡くなった。

91歳と長生きされたが、実にアメリカ映画的な顔立ちや存在感の名優だった。

やはり主演作『パリ・テキサス』での名演の印象は強く、また世間的にも代表作であろうが、主に脇での活躍が多かった名バイプレイヤーだった。

『断絶』『ストレート・タイム』、『レポマン』『エイリアン』などでも印象深い好演を見せ、デヴィッド・リンチ映画にはその個性や存在感がかなりよく似合い、常連俳優だったが、ある意味ハリー氏の存在感というのはリンチワールドの一角を占める構成要素だったような気がする。

特にアメリカ郊外の田舎町にいる、リアルだが妙に癖のあるアメリカ人役がリンチ映画では特に映えていた気がする。

『ワイルド・アット・ハート』や『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』でも良かったが、珍しく何も起こらない長閑なリンチ映画『ストレイト・ストーリー』でも、アメリカの農村地域にハリー氏が何気なく登場するだけで、妙にアメリカの田舎町の狂気の気配が漂い、長閑な映画に不思議な緊迫感の亀裂が入っていた。

その他、『フール・フォア・ラブ』『スラムダンス』や、近年でも、前にここでレビューを書いた『セブン・サイコパス』他などで好演していた。

アメリカ映画の魅惑を体現していたような名優だった。

ハリー・ディーン・スタントンさん、ご冥福をお祈り致します。





2017/09/19(火) 00:06:59 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 土屋嘉男




土屋嘉男氏が今年2月に亡くなられていたらしい。

役者になる前は井伏鱒二の釣り仲間で、井伏の弟子の太宰治ともその縁で知り合い、太宰の勧めで俳優になられたという、なんともすごい経歴の方だった。

やはり『七人の侍』他の黒澤明映画での好演の印象が強いが、それと東宝特撮映画での好演もやはり忘れ難い。

前にここでレビューを書いた秀作『透明人間』や、『ガス人間第1号』『マタンゴ』、『ゴジラ』シリーズ他の東宝怪獣映画などを観て、子供ながらに「東宝特撮の顔」とすら昔思ったものだった。

だが、鈴木英夫監督作にも刑事役他などでよく出演されており、丹波哲郎デビュー作の新東宝犯罪映画『殺人容疑者』や、秀逸なサスペンススリラー『彼奴を逃すな』や大傑作『脱獄囚』、前にここでレビューを書いた『社長無頼 怒号篇』や、山崎努主演のピカレスクノワール『悪の階段』などなどの傑作映画での好演も良かった。

TVでは『大激闘 マッドポリス80』の、第1話で殉職する初代キャップ役他などを演じられていたのも忘れ難い。

また、成瀬巳喜男の傑作『ひき逃げ』や『乱れ雲』『妻の心』、白川由美主演の女探偵映画『女探偵物語 SOS』や、石井輝男脚本の佳作サスペンス『黒い画集 ある遭難』、

これも前にここでレビューを書いている『おしゃべり奥様』(中村メイコの旦那役)とエド・マクベイン原作の『恐怖の時間』、

その他、主演作『奴が殺人者だ』や、『100発100中 黄金の眼』、岡本喜八の『斬る』や『日本のいちばん長い日』、『国際秘密警察 絶対絶命』、ATG映画『西陣心中』や、ピーターと同性愛シーンを演じた『薔薇の葬列』、諸星大二郎原作の佳作『奇談』他などでの好演も印象深かった。

温厚な紳士的個性と、人間臭い個性が同居していて、それが硬派な正義漢役やワイルドな役などにピッタリだったり、場合によっては、それが狂気に至る役どころとなる場合もあったが、いずれにしても、どこか品格のある名優さんだった。

土屋嘉男さん、ご冥福をお祈り致します。










2017/09/09(土) 00:06:43 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 ミレーユ・ダルク




ミレーユ・ダルクさんが亡くなった。

個人的にはやはり、好きなジョルジュ・ロートネル監督作での印象が一番強い。

ロートネルの『牝猫と現金』『女王陛下のダイナマイト』『狼どもの報酬』などのエスプリと洒落が効いたフレンチ・アクションコメディでの好演がとても良かった。

その他アラン・ドロン主演でロートネル監督の『チェイサー』にも出ていたが、ドロンとは長い間、愛人関係にあったと言われていたし、共演作も色々あり、『ボルサリーノ』や『プレステージ』他などでの共演が特に印象深い。

他にゴダールの『ウィークエンド』でも好演していた。

自分には何故か、特にロートネル作品に出ている時など、『ルパン三世』第1シリーズの二階堂有希子が声を当てた峰不二子のような印象が、この人にはずっとあった。

どこか醒めててファニー、セクシーだけどふんわかした洒落のめした雰囲気の独特の立脚感というか存在感に良き個性があったと思う。

ミレーユ・ダルクさん、ご冥福をお祈り致します。








2017/09/02(土) 00:06:46 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 トビー・フーパー




トビー・フーパー監督が亡くなった。

やはり『悪魔のいけにえ』が代表作ということになるだろうが、個人的には『悪魔のいけにえ2』の入り組んだ展開の方が好きで、結局『2』が最高傑作に思える。

中には『ファンハウス/惨劇の館』とか『レプティリア』のようなイマイチな作品もあったが、『悪魔の沼』はネビル・ブランドやウィリアム・フィンレイが良かったし、『ドレス』はメッチェン・アミックやアンソニー・パーキンスが中々良かった。

『スペースバンパイア』はそう傑作とは思えないものの、どこか80年代にハリウッド50年代のB級SFホラーをわざわざ大金かけて作っているような不思議な感じがあり、そこは好きだった。

『スポティニアス・コンバッション/人体自然発火』は、『ポルターガイスト』の頃と比べると随分地味なSFホラーを撮るようになったなとは思ったし、『レプティリア』のような巨大ワニパニック映画はさすがに向いてないなとも思ったが、『ツールボックス・マーダー』は中々にフーパーらしい美点が出た秀作だったので、地味な扱い(確かビデオストレート)ではあったが、フーパーついに復活、本領発揮!とまで思ったものだった。

その後『遺体安置室-死霊のめざめ-』や『悪魔の起源 ジン』なども撮っていたが、いずれにしても『悪魔のいけにえ』というのは、自分は『2』の方が好きではあるが、やはり一つの映画ジャンルの発明だったのだろうと思う。

確かにホラー映画というジャンル内の映画だろうし、この手の設定やパターンが先に無かったわけでもないだろうが、『悪魔のいけにえ』から派生し、発展していった映画というものを世界的に大量に生み出したわけだから、やはり一つの映画ジャンルを発明した映画監督だったと言いたくなる。

トビー・フーパーさん、ご冥福をお祈り致します。







2017/08/29(火) 01:29:13 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 西村昭五郎



先日、西村昭五郎監督が亡くなった。

数年前に滋賀の老人ホームに入られ、監督引退されていたが、日活ロマンポルノ第一作である『団地妻 昼下がりの情事』を撮った、ロマンポルノだけでも最多の83本も撮った監督である。

脚本家から貰った脚本が気に入ったら、あまり直さずに撮る、謂わば脚本家の作家性を損なわずに映画を作る職人監督だったようである。

ロマンポルノ以前は、デビュー作『競輪上人行状記』がいきなり高評価だったが、その後小林旭の『不敵なあいつ』、
前にここで評を書いた異色の青春映画『帰ってきた狼』、
佳作『東京市街戦』、
かなり渋いキャストと内容が良い『やくざ番外地』、
レズとジャズと情死などの様々な生態が異色に交錯した真理アンヌ主演の秀作『残酷おんな情死』(でもATG映画的すぎて、この後ロマンポルノまで干されたらしい)他などが良かった。

ロマンポルノ以降は、これも前にここで評を書いた、ラディゲの映画化で中々の佳作だった『肉体の悪魔』や、
濃いテイストの『黒薔薇夫人』 、
こちらも前にここで評を書いている、ワイルドさとメロウな繊細さが同居した『愛欲生活 夜よ、濡らして』 と蘭光生(式貴士)原作の、式貴士らしさすらよく出ていた、ロマンポルノ屈指の傑作『鏡の中の悦楽』他などが特に良かった。

西村昭五郎作品には、いささか抽象的な言い方だが、映画に独特の粘りというか、映画という運動体にドラマや物語や人間が独特に粘りついて、いつの間にか粘り気のある色濃い有機体と化していくような醍醐味があった。

上記の秀作群は、その西村昭五郎的な粘りの色濃い有機体の醍醐味が映画自体の魅力として特に輝いていた作品だった。

別に作品自体が大傑作というわけではないが、個人的には『濡れて悶える』や『火照る姫』などにも西村昭五郎的粘りの魅力のテイストが出ていたように思う。

ロマンポルノ終了後は、『難波金融伝 ミナミの帝王』の劇場版やTVの二時間ドラマなどを撮られ、その後わりとお早く引退されていたが、やはり職人監督的とは言え、色濃い作家的個性と独特の才気に満ちた映画作家だったと思う。

西村昭五郎さん、ご冥福をお祈り致します。





2017/08/15(火) 00:06:32 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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