0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

追悼 たむらまさき




撮影監督のたむらまさきさんが先日亡くなった。

小川紳介のドキュメンタリー映画での凄ざまじいまでに映画的なカメラワークにはかなり瞠目した覚えがある。

その他相米慎二の「ションベン・ライダー」の見事な長回し撮影もかなり素晴らしかった。

また、青山真治監督とは相当数の作品で組んできたが、青山作品のあの過度な映画的強度を支えたキャメラマンだったのだろうと思う。

黒沢清の「蛇の道」「蜘蛛の瞳」の不気味に映画的な映像も実に印象深い。

その他、最盛期の柳町光男監督作や、「竜馬暗殺」、「萌の朱雀」、「タンポポ」、「2/デュオ」、「のんきな姉さん」、映像的な強度が際立っていた「うらぎりひめ」他などなど、映像的にも映画的にも、画面に映画としての過度な魅惑が溢れる優れた作品の撮影が実に見事だった。

映画的なるものを支えてきた、日本映画史どころか世界映画史に残るべく名キャメラマンだったと思う。

たむらまさきさん、ご冥福をお祈り致します。







2018/06/02(土) 00:04:04 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 星由里子




星由里子さんが亡くなった。

亡くなった今でも流れている、健康食品としてのコーヒーの通販CMで随分お元気そうにされていたのに、残念である。

近年では「科捜研の女」のマリコ(沢口靖子)の母役が印象深いが、若い頃は「若大将」シリーズ、「新網走番外地」シリーズなどに出ていたアイドル的な美人女優だった。

やはり若大将シリーズのヒロインというのが代表作だろうか。

その他、鈴木英夫の、徐々に逞しいバスの車掌になっていく「暁の合唱」や、「旅愁の都」「サラリーマン目白三平 女房の顔の巻」でも好演していた。

岡本喜八映画や、「若大将」シリーズの相手役・加山雄三=刑事の妻を演じた「恐怖の時間」でも良かった。

また「世界大戦争」、名作「父子草」や、爽やかな恋愛映画だが、絶えず不信感から不安な表情を浮かべていた「B・G物語 二十歳の設計」でも妙にサスペンスフルな好演を見せていた。

「モスラ対ゴジラ」他の怪獣特撮や、成瀬巳喜男の「妻として女として」「女の座」、「国際秘密警察 火薬の樽」や、高島忠夫の相手役の「乾杯!サラリーマン諸君」他などなどでの好演も印象深かった。

「刑事物語3 潮騒の詩」では、「科捜研の女」で娘役の沢口靖子と共演していた。

お嬢さん的な品の良さと芯の強さが同居した美人という個性は、老いて尚、健在だったように思う。

東宝という映画会社の個性を代表するような美人女優だったという印象も強い。

星由里子さん、ご冥福をお祈り致します。







2018/05/19(土) 00:06:54 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 大杉漣




大杉漣さんが急死した。

大杉さんが主役の一人としてご本人役で出演している「バイプレイヤーズ」放送ちょっと前に訃報を聞いたので驚いた。

しかも何か持病があったわけでもなく、撮影終了後に、「バイプレイヤーズ」共演者のグループLINEに大杉さんから不調を訴える投稿があり、共演者の松重豊さんが付き添って病院に行くも、そのまま大杉さんの容態が急変し、最後は遠藤憲一さん、田口トモロヲさん、光石研さんら、まさに「バイプレイヤーズ」の仲間たちに看取られて亡くなられたらしい。

一昨日見た「ぐるナイ」のゴチでも元気そうにされていて、最後に自腹となり、皆にご馳走して逝かれてしまったが、とてもこの後すぐに亡くなられるようには全く見えず、その早すぎる突然の死は本当に悔やまれるばかりである。

80年代に高橋伴明、磯村一路、中村幻児、廣木隆一、渡辺護、和泉聖治、滝田洋二郎監督他のピンク映画に出演されていた頃から良かった。

当時のピンクの男優では下元史朗氏と共に愛着のある人だった。

大杉さんが昔出演された「ガキ帝国」の井筒和幸監督による、大杉さん回想話を先日聞いていて、ディレクターズ・カンパニーやユニット5が生まれた時代のあの頃の空気を思い出したが、ちょうど今、その頃、大杉さんが笠智衆的な初老の父役を演じた、周防正行監督の小津映画への野心的オマージュ作「変態家族 兄貴の嫁さん」がベルリンで上映されている時期での訃報である。

「ソナチネ」に出演された辺りから、北野武映画の常連俳優となり、またバイプレイヤーとしてもブレイクされて、その後さらにかなりの数の作品で好演されたが、その頃は黒沢清監督作の常連俳優でもあり、中でもドラマダスの「もだえ苦しむ活字中毒者 地獄の味噌蔵」や、「勝手にしやがれ」シリーズの大杉さんは特に印象深かった。

前に書いた、Vシネ主演作「暴き屋 保険裏仕事人」も良かった。

やはりバイプレイヤーとしての出演作品がかなり多い人だったが、上記の作品や、北野武や黒沢清作品以外では、磯村一路監督の「船を降りたら彼女の島」の哀愁に満ちた父親役が個人的にはベストの名演だった。

その他にも、同じ磯村監督作「愛欲の日々 エクスタシー」や、「凶銃 戻り道はない」、「パンツの穴 キラキラ星みつけた!」、「犬、走る DOG RACE」、「無能の人」、主演作「不貞の季節」、「死国」、「天使に見捨てられた夜」、「エクステ」、三池崇史監督の「DEAD OR ALIVE」シリーズや「フルメタル極道」「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」他、「劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー」、「仮面ライダー1号」の地獄大使役、「ディアフレンズ」、「一枚のハガキ」、「シン・ゴジラ」の総理大臣役他などなどでの好演が特に印象深い。

またTVでも、「遺留捜査」シリーズ、「緊急取調室」シリーズや「臨場」のゲスト出演、「巷説百物語」シリーズ、「広域警察」シリーズ、ピンク映画時代も組んでいた和泉聖治監督の、高橋克典との主演作「ハラハラ刑事〜危険な二人の犯罪捜査〜」シリーズや「相棒」シリーズの衣笠副総監役他などなどで数々の好演をされていた。

大杉さんは、80年代には後の日本映画を支える、上記のピンク映画の名監督の映画で好演し、90年代には黒沢清や北野武他などなどの世界的に羽ばたく名監督の作品に出演し、と、いつも時代の先駆けとなるエッジの効いた監督の、その先行作品に出演され、ずっと好演されてきた。

個人的には70〜80年代に、当時のリアルタイムの上記のピンク映画監督作に、メジャー系にはない傑作が多いことを知って、当時よく観ていた頃から、現在の「バイプレイヤーズ」シリーズに至るまで、こちらが気になって観ているリアルタイムの日本映画やドラマに、いつも様々な役どころで出演されていた方だった。

バラエティ番組でも良かったが、やはり日本映画を長年引っ張ってきた功労者だったと思う。

素晴らしき名優だった。


大杉漣さん、ご冥福をお祈り致します。










2018/02/24(土) 10:34:11 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 川地民夫




川地民夫さんが亡くなった。

若い頃の日活時代は、悪ぶっているがどこか純なところがある若者をよく演じていたように思う。

そんな若者役の「狂熱の季節」、「昼下りの暴力」「すべてが狂ってる」でのギラギラした好演の他、「海底から来た女」や「拳銃0号」、死刑になることに恐怖し、不安な心理に苛まれる死刑囚を生々しく好演した「処刑前夜」、「くたばれ悪党ども」「野獣の青春」、コミカルな好演を見せた「河内ぞろどけち虫」や「河内カルメン」などでも良かった。

東映で菅原文太と組んだ「まむしの兄弟」シリーズはやはり代表作だろう。

中年期以降は、Vシネマで貫禄のある親分役やヤクザ役をよく好演されていたが、「実録九州ヤクザ抗争史 小倉戦争」では、出所後、更生しようと真面目に働くも、様々な偏見に妨害されて、結局また罪を犯してしまう元ヤクザの悲哀を見事に名演されていた。

千葉真一主演のアクション刑事ドラマ、TV「大非常戦」にも出ていた。

その個性、演技、味わい、存在感の全てが日本映画を支えた魅力であり、名優の証であった。

素晴らしき名優だった。

川地民夫さん、ご冥福をお祈り致します。




2018/02/17(土) 01:30:54 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)

追悼 夏木陽介




先日、夏木陽介氏が亡くなった。

やはり車好きが有名な人だったし、武勇伝多しの、かなり豪快な漢の人生を送られた方だなという印象が強い。

東宝時代の、若い頃のコメディ「おいろけコミック 不思議な仲間」でもレイシングドライバーをクビになった車好きの役だった。

21世紀になってからも、前に評を書いた「湾岸フルスロットル」シリーズに出演していたが、やはり、これも前にここで評を書いた、意外な秀作「湾岸最速バトル<スカイライン伝説>」での、伝説のチューナー役は、実にリアリティのあるハマり役で、素晴らしい名演だった。

この作品は夏木氏の後年の代表作だと思う。

その他「宇宙大怪獣ドゴラ」や「用心棒」、「暗黒街」シリーズ他の岡本喜八映画、TVで評判の教師役を演じたドラマの映画版に見える「でっかい太陽」でのクールな好演、「吼えろ脱獄囚」、「女ばかりの夜」や、「大脱獄」での渋い好演などが特に良かった。

またTV「Gメン'75」の小田切警視役、「青春とはなんだ」の教師役、「明智探偵事務所」の明智小五郎役なども良かった。

特に明智小五郎役のジェントルマンぶりは実に決まっていて、「明智探偵事務所」における、明智=夏木陽介、怪人二十面相=米倉斉加年というキャスティングは、今だベストキャスティングだと思っている。(撮影現場は大揉めだったらしいが)

男っぽさと涼しげな爽やかさが融合した名優だった。

夏木陽介さん、ご冥福をお祈り致します。





2018/01/27(土) 00:06:35 R・I・P トラックバック:0 コメント(-)
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