FC2ブログ

0線の映画地帯 鳴海昌平の映画評

『ブリッツ』




エリオット・レスター『ブリッツ』再見、

ロンドン警視庁の刑事ジェイソン・ステイサムは、暴力的な捜査で犯罪者に容赦ない態度を見せていたが、強い正義感を持つ仲間想いの刑事でもあった。

ある日、警官ばかりを狙う連続殺人事件が起こり、犯人は"ブリッツ"と呼ばれた。

ステイサムの暴力刑事ぶりを叩く新聞記者デヴィッド・モリッシーはある情報を入手するが、その情報提供者のエイダン・ギレンこそブリッツであることを知る。

ステイサムはゲイの新任警部パディ・コンシダインと共に犯人を追う。

だがブリッツは次々とステイサムの師や同僚を殺すが、ブリッツの最後の標的はステイサムだった。




ケン・ブルーウン原作の、トム・ブラント刑事&ジェームス・ロバーツ警部シリーズの一作を映画化した刑事アクション映画。

ジェイソン・ステイサムがかなり暴力的な刑事役を演じている。

これが中々似合っているので、かなりステイサムのハマり役だなと思うが、一番出色なのは相棒となる、ゲイの新任警部パディ・コンシダインとステイサムのバディとしてのバランスの良さである。

だいたい刑事映画のバディものでは、正反対の個性の二人が組むケースがよくあり、こちらもやたらと男臭く暴力的なステイサムと、何処か女性的で理知的に見えるゲイのパディ・コンシダインという違う個性の二人が組んでいるのだが、実は中身の正義感の強さやいざとなった時の暴力性においては二人ともほぼ同じという共通点があり、それ故にお互いを信頼し合っているように見えるところに、バディものとしての説得力がある。

それでいて見た目の個性の違いは際立っているから、いいバランスとなっている。

犯人のブリッツ=エイダン・ギレンは、ほとんどステイサムへの復讐で警官殺しをやっているようなものだから、犯行動機はステイサムということになるが、しかし卑劣な犯行を重ね続けるので、ラスト、"毒には毒を持って制す"といった感じの葬り方をされるのもまあ当然だろう、というか、このステイサムの葬り方が中々良い。

またラストに、ブリッツと繋がって記事を書いていたイギリスのマスゴミ記者デヴィッドにステイサムが犬を仕掛けて襲わせて終わるエンディングも良い。

犯人がハナからわかっているので、ミステリ的な醍醐味はあまりなく、クライムサスペンスアクション映画という感じだが、それなりにテンポよく展開していき、飽きずに見られる。

それに薄暗い画像が、地域の治安の悪さを醸し出し、ステイサムによく似合うところも良い。

途中、ステイサムと仲の良い、黒人女性警察官ゾウイ・アシュトンの私生活が描かれ、仲間想いのステイサムの一面も描かれているが、不良少年を更生させようとして、ブリッツの事件に少年が巻き込まれ、自分の代わりに殺されてしまったことで、ショックを受けたゾウイが麻薬に溺れて堕落してしまう顛末は、これは危険なボーダーラインでギリギリの捜査をしているステイサムにも起こりうる暗転と見るべきだろう。

つまり、ステイサムがもしゾウイのように普通の人間のメンタリティなら、きっとこうしてプレッシャーに耐えかねて堕落してしまったろうに、かなり強靭でどこかイカれた奴だからこそヤバすぎる捜査が出来る、ということの対比として、このゾウイの挿話が描かれているように思う。

バランスのいいバディものとして、本当はケン・ブルーウンのシリーズ自体を、中々適役であるステイサムとパディ・コンシダインのキャストのまま、もうちょっと映画化してほしいなと思う、好きなバディものの一篇。 2019/08/17(土) 03:35:36 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)

『キタの帝王 闇の咆哮』

原田徹『キタの帝王 闇の咆哮』、

旧友の検事、大沢逸美に頼まれて、元弁護士本堂俊介=岸本祐二は、婦女暴行事件を起こした加害者が謎の死を遂げる事件を探索し、解決しようと動いていた。

だが、その後も次々と加害者は殺されるが、犯人は「世直し組」と名乗る男達で、彼らの存在と正体を探る岸本は、「世直し組」と戦うことになる。





岸本祐二主演の「キタの帝王」シリーズ2作目。

前回弁護士を辞める羽目になった岸本がアウトローな法律の専門家として悪と戦うお話。

しかし、悪と言っても、どう見ても悪人は婦女暴行事件を起こして殺されて行く加害者たちであり、岸本が対峙する「世直し組」リーダーの寺島進は、妹をレイプされて殺された恨みを晴らす復讐者であって、粗暴な殺人狂ではあるが、それほど完全に悪人という風には描かれていない。

ただ普通、そういうタイプが悪役の場合、主人公が敵に多少の同情を寄せたり、または悪役側の末路に多少花を持たせたりするものだが、その辺りには一切の配慮はなく、悪役は悪役としてあっさり寺島は殺され、岸本も一切の同情も感傷も見せないで「世直し組」を抹殺してしまい、全く殺人罪にも問われず正義のヒーロー扱いとなっており、なんとも容赦のない図式性に収まっている。

前作では全くの脇役だった大沢逸美が事件捜査を岸本に依頼する役どころとしてお話の真ん中にいたり、悪役っぽかった微妙なスタンスの岸本の元上司の弁護士・西岡徳馬が割と善玉寄りになっていたりと、前作からの脇のキャラクターを活かしている。

また、この時期(1997年頃)Vシネや二時間ドラマ他に脇でよく出ていた津久井啓太が、前作にて岸本のせいで弁護士事務所を辞めた後、今作ではコンビニで細々と働いている顛末となっているが、思えばある時期から、このアゴ勇の息子みたいな顔した津久井啓太を全く見なくなったのだが、もう引退しているのかもしれない。

それを言うなら、かなりの男前である主役の岸本祐二も、もうここ数年全く見ないが。

終盤は前作同様、岸本と悪役とのスラップスティックなドタバタ格闘劇が描かれている。

まだ若き寺島進も、妹の恨みを晴らす復讐者にして、殺人の快楽に溺れている悪役をわりと好演している。

まあどうということもない出来のプログラムピクチャー的作品だが、一応ドラマ的にも活劇的にもちゃんとはしている一篇。 2019/08/13(火) 00:06:39 Vシネマ トラックバック:0 コメント(-)

『悪夢のエレベーター』




堀部圭亮『悪夢のエレベーター』再見、

マンションのエレベーターに乗っていた斎藤工は気を失うが、気が付くと乗り合わせていたヤクザっぽい内野聖陽や、ゴスロリ風の佐津川愛美、マンション住人でジョギングに行く予定のモト冬樹が周りにいた。

斎藤は妻の本上まなみの出産に立ち会いに向かうところだったが、エレベーターの非常ボタンは壊れ、携帯電話も電池切れで使えなかった。

怪しい佐津川も携帯を捨ててきたというので、それを詰るとナイフを出してくる。

斎藤は周りに何故このマンションにいたかと尋ねられるが、内野は住民ではなく、偽名を使っていたことがバレる。

佐津川は一番高い建物のマンションからの飛び降り自殺という目的を告白。

実は超能力者で、他人の体に触れると心が読めるモト冬樹は、佐津川の心に燃える家が見えるという。

すると姉への嫉妬から青少年なんとかセンターに放火したことを佐津川は告白する。




木下半太の原作を、俳優、芸人、放送作家の堀部圭亮が監督して映画化した作品。

一応原作に中々ひねりがあるので、それなりに退屈しない映画にはなっている。

途中、斎藤工がエレベーター内の状況のおかしさを疑い出したところで、映画は第2部に突入するように、事態の真相をネタバレ的に回想していく。

だが、そこからさらに偶発的に事態の急変が巻き起こり、お話が完全にひっくり返り、ついには真相が発覚し、ブラックなオチで終わっていく。

事態のネタバレ真相開示から、偶発的な急変、さらにどんでん返しでブラックなオチに至るまでをわりと見易くわかりやすく整理して描いているところは悪くないと思う。

しかし演出や、その事態の転換や急変を整理して描いていることが、逆にどうにも映画を軽くしている。

だから、まあ今時珍しくもないオチではあるが、それなりにインパクトを狙えるラストの真相も軽くなってしまい、結局、わかりやすさや軽さ一辺倒な単調さを感じさせる。

こういうどんでん返し芸の映画を、未整理でわかりにくくしてしまうよりはいいかもしれないが、悪くはないものの、ちょっとだけ勿体無い出来である。

内野聖陽はせっかく演技力があるのだから、後半や終盤まで軽い演技をすることはなかったんじゃないのかと思う。

それは佐津川愛美にも言えることである。

ソツのない出来だが、インパクトは足りない。

だが全体的にはまあまあな感じの一篇。 2019/08/10(土) 00:06:47 日活 トラックバック:0 コメント(-)

『熟女ラーメン おつゆは熱々』

清水大敬『熟女ラーメン おつゆは熱々』、

加山なつこと、子供が生まれてからヤクザから足を洗った竹本泰志の夫婦は、ラーメン屋を営んでいた。

夫婦で愛しあっていると、竹本の元舎弟若林立夫が現れ、敵対組織に組長と若頭が殺されたと言う。

元兄弟分の柳東史が仲裁役だったが、連絡がつかず若林が竹本を頼ってきたため、今はカタギの竹本が殴り込みをかける。

12年後、服役中の竹本の出所が決まるが、妻の加山はラーメン屋を一人で切り盛りし、柳は組を企業にして存続させ、社長となっていた。

成長した娘の香西咲は女優を目指して、年の離れた恋人兼事務所社長のなかみつせいじとオーディションへ行く。

だがオーディションは下着姿にさせられる羞恥に満ちたもので、香西は泣きながら落胆するが、オーディション会場にいた監督志望の野村貴浩に、自分の低予算監督デビュー映画の主演に抜擢したいので、そのつもりでオーディションへ来て欲しいと言われる。

その頃、出所後、娘に会いたいと言う竹本の希望を聞いて、加山は悩んでいた。





ラーメン屋の話と任侠ヤクザ話と親子の話が微妙に絡んだ映画。

その絡み方は妙にユルく、ラーメン屋の描写もワンパターンの連続、任侠ヤクザ話も真似事っぽい描写でイマイチ決まっていないので、途中まではユルユルで空中分解寸前の、焦点の定まらない映画という感じがする。

しかし、後半にかけて、わりとドラマ的なまとまりを見せ始め、意外にもユルユルしたまま、ちゃんした人情ドラマに成り得ていく不思議な映画である。

後半の、娘の香西が出所後の父竹本に会うことを承諾した場合は、加山が店にちょうちんを掲げておくという挿話は、露骨に『幸せの黄色いハンカチ』だが、その後の描写にちゃんと一捻り加えている。

ユルイ描写がバラバラと散漫に描かれるだけなようで、それが徐々に、ネジがユルユルなまま、ちゃんとした人情ドラマに生成していくところが、この映画の個性だろう。

野村が監督する映画のオーディションの日に、オーディション会場を覗いたなかみつが、香西の目にゴミが入り、それを野村が取ろうとしたのをキスしていると誤解して、自分より才能のある若い男に香西が惹かれるのは仕方ないと諦念を抱く描写などもユルイと言えばユルイが、そこに中々哀愁が感じられる。

その後、寂しい加山となかみつが一夜の男女関係に至る挿話も、それが伏線としてラストのハッピーエンドのアクセントになっているようなところがある。

また任侠ヤクザ話も、最初は真似事っぽいベタな描写でパッとしないが、それが最後には、意外と竹本、柳、柳の情婦・青山真希の思いがそれぞれよく伝わるものとなり、こちらもユルイまんま、ちゃんとまとまっていくのだからわからないものである。

ラーメン屋のユルいワンパターン描写も、ちゃんとラストにハッピーエンドの伏線的機能を見せ始めるし、結局ユルイまんま、映画のまとまりに貢献している気がする。

また、香西咲が年の離れたなかみつせいじと付き合っているのも、なかみつが劇団時代の恩師で、妻と別れてまで香西の事務所を立ち上げてくれた恩義もあるだろうが、香西にはどこか、向き合ってこなかった父親の面影をなかみつに見ているところがあり、まるで父を求めるようになかみつを愛していることが、あんまり明確な描写もないのに、徐々に伝わってくるようになっている。

かって竹本と仲違いした柳東史も、悪役的に見えて、実は一番周りの人間の世話をしてきた存在であることが判明していき、そこからそのままハッピーエンドとなるので、こちらも意外とユルイまんま、ちゃんと自然な流れからの結末となっている。

途中、監督・脚本・音楽・美術・出演の5役を引き受けている清水大敬が、白髪のオーディション監督役で出てくる。

香西咲は、まだ前所属事務所社長によるAV出演強要や、契約無視による後遺症の発生を告発して有名になる前だが、この映画では伸び伸び演じて好演している。

空中分解寸前のユルイだけの散漫な映画に見えていたものが、ユルイまんまで、いつのまにか人情味のある映画として最後にはちゃんとまとまっていく、中々微妙で不思議な一篇。 2019/08/06(火) 08:18:17 その他 トラックバック:0 コメント(-)

『待つなジャンゴ 引き金を引け』




エドアルド・ムラルジア『待つなジャンゴ 引き金を引け』、

ある日、牧場主の老人が強盗団に襲われ、大金を強奪される。

強盗団に父を殺された息子ジャンゴ=ショーン・トッド(アイヴァン・ラシモフ)は、復讐して金を取り戻そうとし、止める妹ラーダ・ラシモフを振り切って出て行く。

ジャンゴは、強盗団の一味で父の仇の男を探し出し、男とその子分を撃ち殺す。

だが子分を殺されて怒る強盗団のボスは、腕のいい殺し屋にジャンゴ抹殺を依頼する。





定番なお話のマカロニウェスタンの一作。

ジャンゴのガンアクションがやたら決まる映画だが、それはまあそれだけジャンゴが凄腕で強い設定になっているからだろう。

タイトルは『待つなジャンゴ 引き金を引け』
などと、さもジャンゴが人道的に発砲を控えがちなキャラみたいになっているが、やってることは真逆で、まあ撃って撃って撃ちまくり、速攻でブチ殺しまくりである。

たぶんこのタイトルは、終盤の決闘場面でジャンゴに向けて仲間から発せられた台詞から来ているのだろうが、そこでもジャンゴはそんなことワザワザ周りに言われるまでもなく、妹を人質に取られていようが待つ気ゼロ、撃つ気満々であり、要するに「発砲するのにワンシーンも躊躇するな」と乱射魔相手に助言してるようなタイトルである。(苦笑)

だが仲間がこれをジャンゴに言ったのは、終盤の決闘で、この仲間が、馬車で走り回って敵の囮になって自分に発砲させ、その隙にジャンゴが敵を撃つという連携プレーをやっているからな気もする。

謂わば連携プレーの合図の言葉という意味合いなのかもしれない。

派手なガンアクション多しのわりに、ジャンゴ=ショーン・トッド(アイヴァン・ラシモフ)が地味なので映画も地味目だが、妹役のラーダ・ラシモフはアイヴァン・ラシモフの実の妹であり、リアル兄妹で共演しているからか、なんとなくマカロニ的な虚構性の派手さより、民族の報復劇といった印象が少し感じられるテイストだったりはする。

お話もマカロニの定番な展開ではあるが、わりと無駄なくスタスタ展開していき、よくまとまってはいる一篇。 2019/08/03(土) 08:53:58 外国映画 トラックバック:0 コメント(-)
次のページ